◆「ロケット1発食糧3年分」の噂 金正恩氏 評価は低迷
金正恩政権が核実験を強行した2月12日の晩、北部の両江道(リャンガンド)に住む取材協力者の女性と電話が通じた。この日正午前に行われた核実験について、北朝鮮内部の空気を訊くためだ。
日本では、既にテレビ各局が臨時ニュースを流す騒ぎになっていた。ところが、彼女は核実験実施を知らなかった。旧正月明けのこの日、日没までずっと市場を回って商売に勤しんでいたのだという。
「あら、やったんですか。市場はいつもどおりで、核実験について話している人は誰もいませんでしたね。緊急の行事もなかった。今、まったく電気が来ていないのでテレビも見られないし、そもそも庶民の暮らしと核は何の関係もないじゃないですか」
投げやりで面倒くさそうな口調であった。
核実験や「ロケット」発射がある度に、朝鮮中央テレビや労働新聞などの官営メディアは、間髪いれずに「喜びに沸く人民」というニュースを流す。今回も、当日の晩から、「核実験成功の報せに万歳する平壌市民の姿」が放送された。
昨年12月の「ロケット」発射の際にも、踊って喜ぶ市民の姿が放送されている。そして、それらの映像は、すぐに日韓のメディアが引用して流すのが常になっている。北朝鮮当局による「人民は望み、喜んでいる」という演出を日韓のメディアが手伝い流布させている構図である。
1月24日には、国防委員会名で「核実験は米国を標的としたものになる」、それが「わが軍隊と人民が得た最終結論である」という声明が発表された。これも「人民が望んだ」という名分を立てている。このように、北朝鮮当局が世界に発する「体制と人民は一体」というイメージがメディアによって拡散されるということがずっと繰り返されてきたため、国際社会は政権の姿勢と一般民衆の区別がつきにくくなっているように思う。
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