◆ミャンマー人の団結を呼びかけ
ミャンマーの最大野党・国民民主連盟(NLD)党首のアウンサンスーチー氏(67)が13日、東京・渋谷で在日ミャンマー人の集会で行った演説全文の後半部分を掲載する。(取材・訳 赤津陽治)
(承前)
私たちがホテルからこちらに車で向かっているとき、私と私の秘書のドクター・ティンマーアウンは、道路を見て、「すごく清潔できちんとしているだけでなく美しい。日本人は本当に審美眼を持っている」と話しながら、季節に関連して、私の考えを話しました。
私たちミャンマー人の短所のひとつは何かというと、規律正しくないという点です。規律正しくないということと、先のことを考えて準備しないという点です。私は言いました。まだ若かったときに私はこう考えたことがあります。
先のことを考えて準備できるというのは、季節が四つ、はっきりと分かれている国の国民の方が長けているという見方を私は持っています。考えてみるべきこととしてこのことを話したのです。なぜならば、季節がはっきりと移り変わると、各季節のために前もって準備しなければなりません。
たとえば、こちらの冬は非常に厳しい。冬が来る前に、冬には手に入らないものを貯えておかなければなりません。冬のために準備しなければならない。そして、冬から春になる前に、春のための準備をしなければなりません。そして、夏のために準備しなければなりません。そして秋のために準備しなければなりません。
私たちの国ミャンマーは、大ざっぱにいって、雨季と乾季の二つの季節しかありません。しかし、私たちの国は、運が良いというべきなのか、運が悪いというべきなのか、二つの季節両方において食べるのも生活するのも楽です。楽なので、前もってあまり準備する必要がありません。あまり必要がないので、前もって準備するという面が発達しなかったと、私は若いときに考えたことがあります。
しかし、今このことを考え直してみても、ある程度は同じような見方ができると思います。私たちは、前もって考えて準備するということを、もっと学び練習し、身につけなければなりません。
規律正しさということも、これに関連します。規律正しさというのは、前もって準備するということに大きく関わりがあります。この国にいる間、この国の良き慣習を学んでください。学んで、身につけてください。学び、実行して、身につけてください。学ぶだけではだめです。学び、実際に行動してください。いつの日か私たちの国で生かすことができるように。私たちの国に帰る人だけではありません。
帰らずにこの国に暮らし続ける私たちの国で生まれた人たちも、できるだけ自分の国に関心を向けてもらいたい。それを義務だとは私は言いません。しかし、それは、愛情として、恩義として、忠義として、できるならばすべきことです。私としては、そのことを心に留めていただきたいと思います。
もう一つ、たびたびジョークも交えて言っているのですが、質疑応答に入る前に最後に申し上げたいのは、「団結しましょう」ということです。このことはどこに行っても言わないといけません。「ミャンマーから来た者同士団結しましょう」と。同じことを繰り返し繰り返し言っています。
これはなぜなのだろうかと、私は何度も考えました。これも、子供の育て方に大きく関係していると私は考えています。ですから、この国にいる間に、この国の子供がどのように育てられているのか、自分が真似るべきことは何があるだろうかと見なければなりません。
全部真似しろということではありません。どんな国でもどんな社会にも短所はあります。長所があります。長所を自分から学ばなければなりません。
私の見方では、私たちミャンマー人が団結しない原因は、自分に自信がないからです。自分に自信がないから、他の人が自分よりも良くなるのを非常に恐れるのです。(拍手)
この心性を直してください。誰にもそれぞれの価値があります。それぞれの人にそれぞれの価値があります。リンゴとミカンのどっちがいいと言えるでしょうか。言えないですよね。ミカンが好きな人ならミカンですよね。リンゴが好きな人ならリンゴですよね。もしリンゴがミカンに嫉妬したら、リンゴの方が頭がおかしいということになりますよね。
私たちが嫉妬心をなくすには、自分に自信が持てるように自分で育成しないといけません。本当は、親が子供たちに小さいときから、そのように育てないといけません。子供たちを比較して話したり、ミャンマー人の親たちはやることがありますよね。「お兄ちゃんほど賢くない」とか「妹の方がずっといい子だ」とか。
そういう風に比較して言うので、子供たちは、競争心や嫉妬心、他人が自分よりも良くなったら自分が低くなったと卑下する気持ちを幼いときから持つようになってしまいます。だから、団結が弱いのです。
ですから、自分でもよく考えてください。そして、正直である必要があります。正直であるには、自分のことを誠実に素直に分析する必要があります。自分で分析してみて、自分が他人に対して嫉妬心を持っているならば、嫉妬しているということを認めてください。しかし、私たちのほとんどがいつも自分に非があるとは認めません。相手に非があるからだと考えがちです。(拍手)
そういう考え方のままでは、絶対に直すことはできません。相手を変えることができなければ、最後には自分を変えるしかありませんよね。そういう風にやっていってもらいたく思います。(終わり)