4月13日に東京・渋谷で開かれた、ミャンマーの最大野党・国民民主連盟(NLD)党首のアウンサンスーチー氏と在日ミャンマー人との対話集会では、スーチー氏の冒頭演説の後、質疑応答が行われました。その模様を再現、全文を連載します。
(取材・訳 赤津陽治)
ASSK(アウンサンスーチー氏、以下、ASSK):
さて、質問に答える予定だと思うのですが...。国外にいるミャンマーの同胞の人たちに会った際には、私はいつもこうした質疑応答をやっています。それは、ひとつは、国外にいるミャンマーの同胞の人たちの考えや問題を知りたいからです。もうひとつは、きちんと質問できるようになってもらいたいからです。
時に私は思うことがあります。質問といっても、質問することと質問できるということは異なります。質問することは、誰にでもできます。質問できるということは、理由をよく理解し、質問すべきことを質問するということです。何を聞く必要があるのか、何を知る必要があるのか。
時には、質問が質問ではなく、作文のようなものになっているときもあります。胸中を披瀝したいのだと理解はできます。しかし、皆のことも考えないといけません。たくさんの人の中で自分だけが胸中を披瀝していたら、他の人たちの機会がなくなります。
私は可能であるならば、ひとりひとりと話がしたい。それは現実的には無理なことです。現実的にできないため、こうして集まってもらって話をしているのです。こうしたかたちで話ができることでさえも、満足しています。嬉しく思っています。質疑応答の時間が少なくならないように、早速、質問に答えていきたいと思います。
【事前にメモのかたちで集められた質問は、「政治」「経済」「教育」「その他」に分類され、スーチー氏がメモを各分野から無作為に拾い上げ、読みあげて答える形式で進んだ】
ASSK:
経済についての質問はかなり少ないですね。変わっていますね。政治についての質問から始めます。
質問:
ミャンマーの憲法を起草するにあたって、どういったことを基本にして起草すべきだと思いますか?
ASSK:
憲法とは、ひとつの国をどのようなかたちで統治するかを決める法です。ですから、どのように起草すべきかというと、憲法を起草するグループは、国民の大多数から信頼され尊敬を受けていなければなりません。これが第一に重要なことです。国民の大多数からの信頼と尊敬を得ていない者たちによって起草された憲法を国民が信頼するはずがありません。尊重するはずがありません。
法というのは、国民が遵守して初めて、国民が遵守すべきだと受け入れて初めて、効力を持ちます。私たちの国ミャンマーの現行憲法の起草に関して、私たち国民民主連盟(NLD)や他のグループがかなり批判しました。それについては、私からここで詳細には話しません。時間がかなりかかってしまうので。
憲法を起草するにあたって、第一に起草するグループが相応しい者たちだと国民に受け入れられなければなりません。相応しいというのは、能力があり、公平無私であり、国民から尊敬されるに値する者であり、国民から信頼されていなければなりません。
また、憲法の起草過程に透明性がなければなりません。起草の過程・手続きも国民が受け入れられるものでなければなりません。透明性があって初めて国民も受け入れることができます。受け入れることができない点があれば、批判する機会が国民に与えられなければなりません。
憲法を起草する前に、誰がどのような目的で起草しようとしているのかを国民の大多数に知らせ、国民の大多数の合意を得ることが必要であると私は思います。
そうした段階を経て、憲法にどのような内容を盛り込むべきかということは、起草する権限を与えられた者たちが決めるといえども、国民の意向、国民の希望が中心的なものになると思います。そのようなやり方で起草するのが相応しいと私は思います。(拍手)
質問:
お母さん(=スーチー氏)、お疲れのことだと思います。特に質問はしません。お母さんを尊敬するあまり、お母さんを誇りに思うあまり、お母さんに会いたいあまり、お母さんの話を聞きたいあまり、参りました。お母さんが健やかでありますように。
ASSK:
これって「経済」?(拍手)
ありがとうございます。これは初めから「その他」の箱に入っていないと。どうして「経済」の方に入っているのかしら。(笑)
でも、ありがとう。このように愛情を持って書いてくれた手紙なら、どれに入っていてもいいと思います。(拍手)
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