質問:
健康上の問題が起きた際に、スーチーさんがやらなければならない仕事を受け継ぐ後継者を、スーチーさん自身が選んでおくべきだと思います。できれば、私たちに教えてください。きょう1日しか会える機会がありませんので。
ASSK:
こうしたことを一部の人はしばしば私に言います。私は同意できません。民主主義を信じる者にとって、指導者は自分の後継者を選ぶものではありません。国民が選ぶのです。それは国民もわかっています。王制ではないのです。自分の後継者を指名して選ぶことを、私は全く考えていません。
私たちが何をやっているかと申しますと、できる限り次の世代を育てようとしています。育成し、能力の向上を図っています。それもかなりの労力が必要なことです。
はっきりと申し上げるならば、私たちの国の教育制度が約50年間にわたって後れを取ったために、次世代の若者たちは、前の世代の人たちほど能力を十分に備えていません。これは事実です。最近の若者たちをけなしたくて言っているのではありません。ありのままを申し上げています。
これは、その世代のせいでもありません。いうなれば、私たち皆の責任です。私たちそれぞれが責任を持たないといけません。自分の国のことは皆に責任があります。自分がやったのではないとは言ってはいられません。皆に関わりがあることです。私たちにも責任があります。
教育制度の欠陥がゆえ、そして政治体制の弊害がゆえに、次の世代の人たちに任せるためには、その育成に大きな努力を払わなければなりません。ですから、自分の後継者を(選ぼうとは)夢にも思いません。しかし、継承できる人が多く存在するように、機会を与え、できる限り育成します。最終的には、本人が自分でやらなければなりません。他力本願でなく、自ら努力しなければなりません。
たとえば、国民民主連盟(NLD)は、長年にわたって、非常に活動が難しい時期にさえも、常に研修をおこなってきました。英語の研修、経済に関する研修、人権に関する研修、政治に関する研修、さまざまな研修をおこなってきました。若者がそうした研修を受けるようにできる限り呼びかけました。
しかし、研修を受けても...私は何に気づいたかと言いますと、大まかに言って、10人のうち本当に秀でてくるのは2人程度です。なぜか。努力するからです。本当に一生懸命に努力する。(そうすれば)5人くらいは伸びます。残りの半分の5人くらいは伸びません。
伸びないというのは、できるようになってもらいたいので研修に参加させたものの、興味深いものではなかったせいかもしれませんが、別の面を言えば、自分の生活で精一杯だからです。
と言いますのも、私たちNLDの党員は誰もお金をもらっているわけではありません。私たちも給料を出しているわけではないので、自分でやらなければなりません。ときには、家族もおり、家族のために必死にならなければならないため、時間をあまり割くことができません。学びたくないわけではありません。しかし、そのような事情のために、得た機会を十分に生かすことができないのです。
最近は、私たちが研修を行なうにあたって、若者が受講しやすい環境になってきましたので、より大きな手応えを感じています。若者は向上心を持っている人が多いですし、学びやすい環境になってきましたので、その面ではかなりの成果が出ています。それを私たちは続けていくつもりです。
私たち国民民主連盟(NLD)党員だけでなく、私たちの国の皆が、能力向上するように、できる面でご支援ください。ひとつの国には、指導者をやれる人たちが多数いる方が良いのです。多数の中から国民が自分の好きな人を選ぶのです。さらに、自分くらいできる人間はいくらでもいるのだと、その人物も少しは謙虚になるでしょう。
(つづく)