◆「戦争すれば、皆滅びる」
:戦争に対する北朝鮮住民たちの認識はどうでしたか。
:私が北朝鮮にいたときも(2000年に脱北)、戦争すれば勝てるという人は多くなかったように思います。特に1990年代後半からは、そういう雰囲気が強まったと思います。

本心なのか冗談なのか、「我々には将軍様がいらっしゃるから勝てる!」という人はいましたが、私は内心、そういう人を笑いました。どうせ戦争をすれば、勝ち負け云々を言う前にみんなが被害を受けるだろうと思ったのです。

他の人たちも表向きには共感するようでしたが、たぶん私と同じような思いだったのではないかと思います。大人たちが仲の良い友人たちとのお酒の席で話しているのを聞いたことがありますが、戦争の勝敗についてよりも、戦争をすれば南朝鮮や米国だけでなく我々も皆死ぬ、皆滅びる、といったような話でした。勝てないという認識があったと思います。

:北朝鮮の住民がそのような認識を持つようになった原因は何だと思いますか。
:まずは、韓国など外国の映画やドラマなどを通じて(違法だが隠れて視聴)、韓国や外国がどれほど発展しているのかを知っていたからだと思います。しかし、それより大きな理由は、北朝鮮の軍隊の実情をよく知っていたからではないかと思います。

:北朝鮮の軍隊の実情とは、どのようなものだったのですか。
:同年代の友達が軍隊に行って、栄養失調にかかり帰ってきたのを実際に目撃しました。私が16歳か17歳のときだったと思います。

私より2歳ほど年上の友達がいましたが、軍隊に行ってからしばらくして、顔は腫れてお腹も膨れ上がっているのに、足は子どもの足のように痩せ細って帰ってきました。除隊したのではなく、栄養失調にかかったので家で療養をするために帰ってきたのです。家族が献身的に介護して友達の体調がよくなってくると、その友達はまた軍隊に戻らなければなりませんでした。
栄養失調にかかり、死体のようにリヤカーで運ばれる軍人たちも見ました。

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