◆「草食べていたの?」と訊かれたことも

昨年12月に長距離「ロケット」を発射してから今日まで、北朝鮮は国際社会を緊張させ続けている。北朝鮮の負のニュースが流れる中、日本に暮らしている脱北者は「北朝鮮からきました」と言うない悩みを抱えているという。
(取材・整理 南正学)

リ・ハナさん。写真:金慧林

 

(承前)
:たくさんの脱北者たちが、日本社会に適応しようと懸命に努力しているんですね。日本社会の反応はどうでしょうか?
:よく接してくれる人たちが多いのですが、しかし、先にこちらから「北朝鮮から来た脱北者です」と明かすのは躊躇してしまいます。

:なぜすか?
:日本の中の北朝鮮の持つ「悪いイメージ」のせいですね。学校生活の中でも、就職活動をしていても、北朝鮮から来たということで、もしかしたら不利益があるかもしれないという心配が先立つんですよ。日本では、北朝鮮の民衆の生活についてよく知られていない上に、日本に住む脱北者の数が少ないため、誤解が生じやすいのだと思います。

私に「北朝鮮で草を食べて暮らしていたんだって?」と訊く人もいました。挙句の果てには「スパイではないか」という声まで聞こえてきました。

私よりも先に日本に来た脱北者たちの中には、「日本人が自分たちを珍奇な生き物でも見るように接することがつらかった」と言う人もいました。今は時代が変わってそれほどではありませんが、テレビやニュースで北朝鮮に関する悪いニュースが報じられるたびに、私も知らず知らず萎縮してしまい、「脱北者です」と言いたくても、言葉が出てこないんです。

:他の脱北者も同じような悩みを抱えているのでしょうね?
:そうでしょうね。脱北者の多くが一度は経験する悩みだと思います。職場や学校で人に会う際、突然「どこから来たのか?」と訊かれると、少なからず動揺することになりますから。どう答えるか前もって準備する人もいるのでしょうが、焦って「韓国から来た」と言ってしまう人たちもいます。堂々と「北朝鮮から来た」と言える人は多くないと思います。

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