◆ピースキャンドル 一家の思い
最後に、名護市瀬嵩の渡具知さん家族の声をご紹介したい。
瀬嵩は、辺野古と同じ東海岸にある静かな集落で、ジュゴンも生息する大浦湾に面している。辺野古「移設」というが、実際は巨大な新基地計画であり、大浦湾は原子力空母も接岸できる軍港や実弾の装弾場などとして狙われている。
測量業を営む武清さんは、妻の智佳子さんとともに、基地受け入れの賛否を問う名護市の市民投票が行われた97年から、一貫して基地建設反対を訴えてきた。建設業者には賛成派も多い。反対の声をあげることは、仕事を失うことも意味する。
この日、開会の1時間半ほど前に会場につくと、バッタリ武清さんと子供さん3人に会った。朝の8時過ぎに瀬嵩を出てきたという。武清さんが皮肉交じりに語る。
「きょうからまた出発、という気持ちで参加する人が多いんじゃないかな。4・28のことは忘れている人も多かったと思う。きょうの日を、目覚めさせるアベくんに感謝だね」
一家5人は2004年11月から、同じ「ヘリ基地いらない 二見以北10区の会」の浦島悦子さんらと毎週土曜夕方、「ピースキャンドル」を続けている。キャンプシュワブ前にロウソクを持って立ち、道行く人たちや車に手を振り、新基地建設反対を訴えるのだ。日米が「辺野古」に執着する現実の中で、今年11月が来るとまる9年になるという。「こんなに長くなるとは......」と武清さん。
97年の市民投票の年に生まれた武龍くんは今春、高校に進学した。
「どれだけ声をあげても聞いてくれない。対等に見ていてくれないんだなと怒りを覚えます」
物心ついたときから両親に連れられ集会に参加していた。最初は「どうして?」と思っていた。だが、だんだん成長するに連れ、両親の思いがわかるようになったという。毎週、どんな思いでキャンプシュワブの前に立っているのか。
「早く終わりたいですよね......。でも、終わらせるためには、やらなきゃならない」
そう言って武龍くんは、笑顔でこんなふうに話した。
「あの活動を続けていることで、たくさんいろんないい人たちに出会えました。早く区切りがついて、その人たちと楽しくバーベキューでもしたいですね」
武龍くんの下は、和紀さん、和奏さんの双子の姉妹だ。小学6年生になったという。和紀さんが次のように言う。
「沖縄はアメリカのものじゃないのに、なんで沖縄に基地をつくりオスプレイをもってくるのか。私たちは意味もわからないままずっと闘ってきましたが、諦めないで、静かな空を取り返して、未来にはオスプレイとか基地とかない沖縄であってほしい」
そして和奏さんが続けた。
「きょうはたくさんの人が、基地がなくなるまで頑張っていくために集まったと思う。お父さん、お母さんは私たちの未来を思って頑張ってくれている。私たちも見習って、自分たちの未来だからこそ、頑張って幸せな国にしたい」
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