内戦で閉鎖されたままのネットカフェ。現在、シリア北部のトルコ国境沿いに暮らす人びとは、トルコのネット回線を使い、国外の親族や友人たちと連絡をとりあう。(シリア北東部ハサカ県カミシュリ 玉本英子)

 

内戦が激しくなって以降、北東部の都市、カミシュリ市内のネットカフェは閉鎖されたままだ。
2004年に反政府暴動が起き、治安当局の監視が強かったこの町では、検閲を恐れ、もともと人びとがネットカフェを利用することはあまりなかった。

市民の多くは小さなアンテナを自宅のベランダに設置して、数キロ先にある隣国トルコのネット回線を利用してきた。業者も存在し、1000円ほど支払えば、1ヶ月間使える。庶民にとって決して安い金額ではないが、国外に暮らす親族とのやりとりには必要不可欠だという。
連絡ツールは、フェイスブックを使う。親族や友人たちに自分の安否を一度に知らせることができる、というのが利点らしい。

アブドゥラさん(仮名:55)はスウェーデンに逃れた息子と週に数回、フェイスブックを通して連絡をとりあっていた。息子はアレッポ大学の学生で、反体制派グループのメンバーとして活動していたため何度も当局に逮捕、拘束された。投獄や殺害の恐れもあると感じたアブドゥラさんは、財産をはたいて息子を欧州へ向かわせたのだった。

フェイスブックの息子のページをひらくと、アブドゥラさんの顔がほころんだ。息子の近況が写真入りでアップされていた。父親へのメッセージ欄には、新しい地での慣れない暮らしと、カミシュリに残る家族の安全を心配する言葉がつづられていた。
「今は我慢の時だ。家族が再び一緒に暮らせる日までがんばろう」
アブドゥラさんは自分に言い聞かせるように、そう息子へ返信していた。
【ハサカ県カミシュリ 玉本英子】

 

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