シリア北東部、ハサカ県カミシュリ市では、内戦の影響で多くの小学校は今も休校を余儀なくされている。そんななか独自に授業を再開した学校がある。政府の支配が及ばなくなったあと、地区で政治力を拡大させたクルド政党、民主統一党(PYD)の判断だ。
市内西部ダハ・ガルビン地区にあるシェリフ・ラディ小学校ではおよそ200人の児童が学校へ戻ってきていた。これまでいた教師は、他の都市へ避難したり、政府に脅迫されるなどで復帰することはできなかった。代わりに避難民として近隣県から逃れてきた大学生たち13人が教壇に立っている。
シリア国民の1割はクルド人だ。しかしアサド政権下では、クルド語での教育が禁止されてきた。クルド人の子どもたちは家でクルド語の読み書きの勉強をするしかなかったが、シェリフ・ラディ小学校では、クルド語の授業も取り入れられることとなった。
小学校の責任者であるペルウィン・メヒディンさん(41)は、「子どもたちの教育なしではシリアの未来は語れない。一日も早く戦闘が終わり、子どもたちが学校へ戻れるようにしなくてはいけない」と訴える。
5年生の教室で児童たちと話をした。シェイダン・アナスくん(11)は「電気がないから好きなテレビ番組も見られない。水もないからシャワーも浴びれない。友達の何人かは町を去った。どうしてこんなことになってしまったの?」
サヤ・アリさん(11)は「ほかの町では、空爆で多くの子どもたちが死んだ。私たち何も悪いことしていないのになぜ」
とうつむいた。
子どもたちの問いに、私は答えることができなかった。
カミシュリ市は今のところ大規模な空爆はないが、政府軍とクルド人組織、人民防衛隊(YPG)の衝突もおきており、今後、戦闘につながる可能性もある。普通の日常が戻るには、まだ時間がかかりそうだ。それまで、子どもたちは耐えなければならない。
【シリア・ハサカ県カミシュリ市 4月上旬取材 玉本英子】
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