大阪府・市が出資する博物館「大阪国際平和センター」(ピースおおさか)がリニューアルに伴い、戦時下の日本の加害を示す展示をなくすことを決定したことで、戦後補償問題などに関わる市民グループの間に危機感が広がっている。
新聞うずみ火(矢野宏)

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ピースおおさか

ピースおおさかは1991年、大阪府と市が共同出資し、大阪城公園内に建設された。かつて東洋一の兵器工場と呼ばれ
「おおさか砲兵工廠」があった場所である。設置理念にはこう記されている。
<被害は大阪にとどまりません。世界最初の核の被爆都市・広島、長崎、「本土決戦」の犠牲となった沖縄をはじめとして、数多くの日本国民が尊い生命を失い、傷つき、病に倒れました。同時に、1945年8月15日に至る15年戦争において、戦場となった中国を始めアジア・太平洋地域の人々、また植民地下の朝鮮・台湾の人々にも多大な危害を与えたことを、私たちは忘れてはなりません>
こうした設置理念に基づき、加害と被害の両面から戦争の実相を伝えるため、「大阪空襲と人々の生活」「15年戦争」(満州事変~太平洋戦争)、「平和の希求」という三つの展示室で構成されている。
だが、ピースおおさかを運営する財団法人「大阪国際平和センター」が4月9日に公表した「展示リニューアル構想」は、施設の目的を新たに「大阪空襲犠牲者を追悼し、平和を祈念する」と規定。展示するテーマは「大阪空襲」と「焦土からの復興・平和の創造」の二つに限定し、中国との戦争、日本の植民地支配、沖縄戦などのパネル・映像を撤去することを打ち出した。
こうしたリニューアル構想の背景にあるのが、大阪市の橋下徹市長が建設の方針を打ち出した「近現代史学習施設」。南京大虐殺など対立する意見を両論併記するとして、歴史修正主義系の学者にも助言を求めることも表明している。リニューアル構想の中で「学習施設との役割分担・連携も意識しながら展示リニューアルを進める」と付記しており、ピース関係者の中で「学習施設が国レベルのテーマを目指すのなら、ピースは大阪レベルに限定すべきだ」という意見でまとまったという。
「加害を消し、被害に偏った」展示になることに対し、危機感を抱いた市民団体や歴史研究者らは「『ピースおおさか』の危機を考える連絡会」を発足、5月10日には岡田重信館長に「リニューアル構想説明会の開催申し入れ」を文書で行ったが、拒否された。
そんな中、同連絡会など関係団体が実行委員会をつくり、6月29日(土)午後1時半から大阪市港区の市立港区民センターで「ピースおおさかのリニューアルに府民・市民の声を!シンポジウム」を開催する。当日は「15年戦争研究会」の上杉聡さんが基調講演を行うほか「大阪大空襲の体験を語る会」代表の久保三也子さんらも空襲被害者の立場から発言を行う。

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