この「うやむや」の理由は二つだろう。ひとつは、簡単に言えば北朝鮮の電池切れ。四月半ばから全国で田植えと種まきの準備をしなければならない。軍人もである。国内で緊張を持続する余裕はなかったのである。
もうひとつは、騒動を作って得るものより失うものが多いという現実がはっきりしたことである。仕方がないという諦め水準であっても、国際社会が核保 有国として認めようというムードは作れなかったし、それどころか、後ろ盾であった中国を、「核不可」で韓米の方に遠ざける結果となった。
発足間もなかい朴槿恵(パク・グネ)政権揺さぶりもうまくいかず、南北関係の主導権も取れていない。「強い軍事指導者金正恩」をアピールすればするほど、韓国・日本における金正恩氏への印象は悪化し、北朝鮮に融和的な人々の立場を悪くした。
一連の戦争騒動の第一の目的は、北朝鮮国内における金正恩氏の権威発揚と体制引き締めにあったと筆者は見ているが、これとて、数か月にわたって緊張と不便を強いられた国民は疲弊が募って、金正恩政権への不満と反発は逆に強まってしまった。
金正恩政権は、<イメージ>戦で、うまく世界の耳目を集めることには成功した。しかし、<戦争騒動>の決算は、大幅なマイナスに終わったように思う。