イラン次期大統領ロウハニ師の学歴詐称疑惑が取りざたされたが英グラスゴー・カレドニアン大学は同師への学位授与があったことを認めた。写真は「グラスゴー・カレドニアン大学、ロウハニ師に祝辞」の記事を掲載したイラン・エコノミーオンライン。

学歴詐称が政治家にとって命取りになるのは、日本に限ったことではない。
去る6月14日の選挙でイランの次期大統領に確定したハサン・ロウハニ師の学歴問題が初めてメディアに取り上げられたのは、彼がまだ大統領選への立候補を取りざたされていた今年1月のことだった。

アメリカ・ワシントンに拠点を置く、欧米在住のジャーナリストらによって立ち上げられた、イラン大統領選挙に特化したウェブサイト、IRAN ELECTION WATCHは、1月24日、ハサン・ロウハニ師が自身の公式サイトで、イギリス・スコットランドのグラスゴー大学で修士号と博士号を取得したと主張しているが、同大学のスポークスマンは「そのような名前は記録されていない」と述べていると報じた。

IRAN ELECTION WATCHはその3日後にもこの問題を取り上げ、グラスゴー大学のデータベースでロウハニ師の名前を様々な綴りの英語表記で検索してみたが、何も見つからなかったと結論付けた。

この問題に、他の欧米メディアはもちろんのこと、改革派のロウハニ師に対抗するイランの保守系メディアまでが飛びついた。
ロウハニ師の選挙事務所はその後、彼が学位を取得したのは、グラスゴー大学ではなく、同じ町にあるグラスゴー・カレドニアン大学だと発表した。

これに対してシドニー・モーニングヘラルドは、ロウハニ師が学位を取得したのは70年代だと思われるが、グラスゴー・カレドニアン大学の創設は1993年であり、しかも、この大学のデータベースにもロウハニ師の名前はないと報じた。

その後、ロウハニ師の選挙事務所は、彼がグラスゴー・カレドニアン大学で修士号と博士号を取得したのは、それぞれ95年と99年であると発表し、また、当時彼は、「ロウハニ」ではなく、以前に用いていた父親の姓「フェレイドゥン」を名乗り、「ハサン・フェレイドゥン」の名で学位を取得していると発表した。

95年から99年といえば、ロウハニ師が国会副議長や公益判別評議会戦略研究センター長などの要職を務めていた時期であり、彼がどのように学位を取得できたのか、それが通信課程によるものなのかといった詳細は発表されていないが、この問題は6月28日、当のグラスゴー・カレドニアン大学がそのホームページの中で、ロウハニ師の次期大統領当選に祝辞を述べ、彼の学位を承認したことで幕を閉じた。

問題は、そもそもロウハニ師の公式HPに大学名が正確に記載されていなかったことが発端だが、欧米諸国が常にイランのイスラム体制を監視し、わずかの隙でも見逃すまいとしていることを印象づけた。この問題を最初に取り上げたIRAN ELECTION WATCHは、イラン側からの抗議に対し、1ヶ月以上も過ぎてから、同ウェブサイトの調査によってロウハニ師の経歴の誤りが正されたと開き直っている。その間も多くのメディアが同サイトの記事を転載・拡散していたことは言うまでもない。
【大村一朗】

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