◆「自衛」が必要な5つの飛散原因
アスベスト曝露から「自衛」をしなくてはならない(2)と(3)について、飛散原因を整理すると次の5つとなる。
(A)建築物などに使われたアスベストの問題
(B)アスベスト廃棄物の問題
(C)違法なアスベストの新規使用問題
(D)リサイクル(再利用)問題
(E)もともと自然に存在するアスベストの問題
第1回で紹介したように、アスベストセンターへの相談が多いのが(A)のすでに建築物などに使われたアスベストについての対処である。最近では(D)のリサイクルについても、ときどき問い合わせがあるそうだ。なお、(D)のリサイクルは、「一応」ないはずの(C)の新規使用の一部ではあるが、若干特殊な事例のため別項目にした。また(A)の建築物などのアスベストに適切に除去・撤去した後で必要となるのが廃棄物処理だ。廃棄物処理がきちんとされなければ、運ばれた先で汚染や曝露を引き起こしてしまう。これが(B)の廃棄物問題で、「最後の課題」と呼ばれる厄介なテーマである。
そして(E)だが、アスベストは天然鉱物であるため、自然界にもともと存在する。それは日本も例外ではない。日本はアスベストをおもに輸入に頼ってきたが、明治時代から国内数十カ所にアスベストを産出する場所があることが知られていた。品質がよくなかったため、輸入が途絶えた戦中以外ほとんど使われることがなかったが、ある程度は含まれている。きちんと調査してみないことにははっきりとしたことはいえないが、地域によってはそうした自然由来のアスベストについても対処が必要かもしれない。
こうした既存石綿や新規使用の問題のうち、現在アスベストを曝露する原因としてもっとも大きいものは(A)の建築物などからの飛散といえるだろう。真っ先に対処しなければいけない問題でありながら、それが非常に遅れているためだ。
前回子どもを中皮腫で亡くした母親の嘆きを紹介したが、そうした被害者を生むアスベスト発生源は、アスベスト製品の工場がなくなった現在では、クボタの旧工場のような固定した1つの工場ではなくなっている。それは無数の小さな解体現場をはじめとする、短期間で高濃度のアスベストを発生させるが、解体されることによってその存在すらわからなくなってしまう現場に移った。あるいは低濃度ながら長期にわたって存在し続ける、これまた存在がわかりにくい現場である。
だからこそ自ら「自衛」することが必要なのだ。同時にそんなことを市民がわざわざしないでよいような法制度と、それを実現する監視・指導の取り組み、そして、そうした訴えがあった場合に問題を解決できるような仕組みを構築することも重要だ。それが再び子を亡くす母をつくらないために、「未来の世代」を守るために取り組まなくてはならないことだ。
次回以降、具体的な「自衛」方法について考察する。
(つづく)
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