辺野古の浜。キャンプシュワブとを隔てるフェンスには平和を願う横断幕が
辺野古の浜。キャンプシュワブとを隔てるフェンスには平和を願う横断幕が

 

■ 辺野古建設1兆円
高江から車で約1時間。東海岸に出て、海沿いの道を南下すると緑豊かな山々に囲まれた雄大な湾があらわれる。青サンゴの群落が広がり、絶滅危惧種ジュゴンが生息するという大浦湾だ。岬の先に米海兵隊キャンプシュワブの建物が見える。その向こう側が辺野古の海である。日米はいま、この一帯を普天間「移設先」として埋め立て手続きを推し進めようとしている。

普天間基地の代替施設として辺野古が浮上したのは1996年。名護市では市民投票で「NO」という意思が示された。しかし、その後、市民の思いは無視され、「新基地建設計画」は二転三転しながら現在も続いている。新基地建設に反対する市民らが米国連邦裁に「ジュゴン訴訟」を提訴したことで、日米両政府が進めようとしている建設計画の概要が判明した。

「V字形沿岸案の実態はこれまで日本政府が説明していたのとは違い、巨大な要塞のようなものでした。県民の負担軽減と言いながら、辺野古の海上を埋め立てる新たな基地建設が進められようとしているのです」と、辺野古のテントで座り込みを続ける田中宏之さんは説明する。
私たちが訪ねた6月22日で、座り込み日数の表示板は3352日になっていた。辺野古への早期の県内移設を目指す日本政府が、公有水面埋め立て承認願書を沖縄県に申請したのは3月22日。沖縄防衛局の職員6人が書類の入った5箱を3階の庶務のカウンターに置き、名乗りもせず、名刺も置かず、わずか1、2分で立ち去ったという。

その後、地元の漁協が埋め立てに同意したことは大阪でも報じられた。「漁協の同意が出たというのはトップニュースで扱い、41市町村の長が東京に行き、首相に県外移設を訴えたというニュースは無視する。着実に進んでいるというふうに見えますよね。辺野古移設を反対している動きは見せないようにするなど、大手メディアは世論操作しています」と田中さん。

埋立申請が出されたことで、3週間ほどの公告縦覧、利害関係者から意見書が提出されたあと、内容の審査に入る。名護市長の意見や海上保安庁と調整のあと、申請の可否判断。埋立を認めると、国が工事を始めることになる。認められないと、国が是正指示を行い、承認を命じる訴訟を高裁に提起する。国が勝訴すれば、行政代執行、もしくは県知事の承認がなくても工事を進めることができるよう法律を改正することも考えられる。

これに対して田中さんは「政府があきらめるまで引き伸ばしていく。それがあきらめていない意思表示です。ここでできることは引き伸ばすことだけ。99%を生かすために1%は死んでも仕方ないという政府の考えが見えてきました。これは沖縄差別です」と訴える。そして、こう言い添えた。
「基地建設には1兆円ほどかかる。使わねばならないところに使うべきだと思います。辺野古移設を止めたときは、日本の民意が勝ったとき。国民を犠牲にして国が成り立つというのはおかしいと思いませんか」
(つづく)
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