◆姉妹が奏でる平和への想い
イラクから来日した、姉妹のスハッドさん(右)とハディールさん(左)は、タレントの藤波 心さん(中央)らとともに、混乱が続くイラクやシリアへの平和の願いと、日本の震災復興などを願い、演奏会を開いた。(27日夜・大阪市内 撮影:玉本英子)
|
いまも混乱が続くイラクから2人の姉妹が、日本の医療支援NGO団体の招きで来日、27日大阪市内で、平和を考える音楽コンサートを開いた。
姉のスハッド・サードさん(20)は、オーボエ、妹のハディール・サードさん(17)は、バイオリンを担当。イラク民謡「ヤシの木の下で」などを披露したほか、タレントの藤波 心さん(16)らが姉妹の演奏にのせて日本の唱歌「ふるさと」などを歌った。
姉妹は幼い頃から音楽に親しんできた。芸術学校に校務員として住み込みで働いていた両親が「どんな時でも、心は豊かであってほしい」と子どもたちに音楽を学ばせた。イラク戦争で練習は一時中断したものの、姉妹は努力を重ね、地元の青少年交響楽団の一員となった。2005年ごろからは宗派対立が激化したが、学校が終わると練習場へ通い続うことはやめなかった。
「外に出るのも命がけだった。爆弾の音を聞いて震え上がった。ちゃんと家に帰れるのかなって、毎日ビクビクしていた」とスハッドさんは、当時を思い起こす。
2011年4月、バグダッドで開かれた「東日本大震災復興支援音楽コンサート」のため、姉のスハッドさんは毎日練習を重ねていた。(バグダッドの自宅にて 撮影:玉本英子)
|
2011年4月には、バグダッド市内でイラク人による「東日本大震災復興支援音楽コンサート」が開かれ、姉妹も参加、故坂本九さんの「上を向いて歩こう」を演奏した。
「日本人は、きめ細やかな心をもったとても素晴らしい人たち。言葉は違うけど、音楽を通して、想いを伝えることができた」と姉妹は話す。
藤波 心さんは姉妹と同世代。イラク人に会ったのは初めて、という藤波さんは、
「ふたりに会ってイラク人のイメージが変わった。とても親切でフレンドリー。つらい経験をしたからこそ人一倍優しくなれるのかな」。
9月からスハッドさんはバグダッド大学の3年生に、ハディールさんは同大学の芸術学部への入学が決まっている。
「この10年、戦争で何もかも失った私たちの国は、すべてゼロからのスタートだった。治安は回復してきたが、今度は隣国のシリアで、多くの人が殺されている。誰であろうと、幸せになる権利はあるはず。みんなの幸せのために、今後も音楽を通して平和を伝えていけたら」。
2人は、音楽を通した活動を今後も続けていきたいという。
姉妹は今後、石巻市(宮城)、伊達市(福島)の小学校などを訪問する予定。
【玉本英子】