イラン外務省。ザリーフ外務大臣をトップに、国連常任理事国+ドイツとの核交渉も担う。(2011年撮影:佐藤 彰)

1979年のイラン・イスラム革命以来、国交を断絶しているイランとアメリカが、まもなく二国間の直接交渉を開始するのではないかとの憶測が広がっている。

イランでは6月、穏健中道派のイスラム法学者ロウハニ師が大統領に当選し、8月には改革派や中道派の閣僚らで固めた新政権が発足した。中でも外務大臣には、長年ニューヨーク駐在を勤めたザリーフ元国連大使が指名され、核交渉の実務担当も国家安全保障最高評議会から外務省に移行されるなど、対外交渉、特に対米交渉を意識した政策が進められている。

こうした中、オマーンのカブース国王が9月10日、イランを訪問した。ロンドン発行のアラビア語日刊紙アル・ハヤートは、テヘラン情報筋の話として、この訪問がオバマ大統領の書簡をイランに届けるためのものだったとしている。

オバマ大統領の書簡には、大統領に就任したロウハニ師への祝辞とともに、核問題でイランが肯定的な措置を取るなら経済制裁を軽減すること、アメリカがイランと直接交渉を行う用意があること、そして、ロウハニ師の大統領当選はアメリカとイランの関係の新章を開くものだと述べられていたという。

ロウハニ大統領は9月24日、国連総会で演説を行うためニューヨークを訪問する。そこで両国の当局者の間に協議の席がすでに用意されているとの憶測もある。

それが単に憶測に過ぎなかったとしても、ロウハニ大統領の演説には注目したい。もしオバマ大統領がロウハニ師の演説に拍手を送れば、それは両国の歴史の中で画期的な出来事であり、アメリカからの明確なメッセージとなり得るからだ。
【大村一朗】

★新着記事