◇次々見つかる調査の不備
住民は「池上旧トーヨーボールの安全なアスベスト除去を願う会」を設立し、安全な工事の実施を求めて行政や事業者への要請活動を展開していく。当時は民主党政権下だったこともあり、11月17日には環境省の田島一成副大臣にも陳情に訪れている。

陳情後、環境省の記者クラブで会見し、「事前調査が不十分なこと、そして不十分な事前調査であっても住民が確認することができないなど、現在の法の不備が存在する」と指摘し、調査に不備があり、違法性があるにもかかわらず、工事が強行されている実態を訴えた。だが、この件を記事にしたメディアはなかった。
その後、住民は安全な工事を求める署名活動を展開。2週間ほどで1100筆以上を集めて区に提出するなど必死に活動を続けた。

こうした活動のかいあってか、大田労働基準監督署が調査の不備を解消するよう事業者に指示した。その結果、工事が一時停止する。

12月11日、竹中土木は住民の要請に一部応じるかたちで、住民説明会を開催した。住民は区の立ち会いを求めていたが、区はこれを拒否した。

説明会では、竹中土木は住民が要望した第三者機関によるクロスチェックを実施したと説明した。
「業者はべつの分析機関がクロスチェック調査をしたので完璧ですといっていたのですが、中身を確かめると前回の調査結果自体はそのままにして一部調査に不備があったところを補充し ただけで、十分なクロスチェックとなっていなかった」と奈須区議は指摘する。

10月末の住民主催の説明会で指摘された、未調査だった地下1階のエレベーターホールで飛散性アスベストが使用されていたことが判明。一方、クロスチェックしたはずなのに、地下1階以外のエレベーターホールほか、大半の天井裏、空調ダクトの調査をしておらず、依然として調査が不十分だった。また調査は第三者機関が実施したと説明したが、実際には前回分析を依頼した業者から別の業者に依頼先を変えただけにすぎなかった。
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