ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん
ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

◇安倍「五輪招致演説」についてのインタビュー全文
2020年のオリンピック開催地が東京に決まった8日の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、福島第1原子力発電所からの汚染水に関する安倍晋三首相の発言が大きな波紋を呼んでいる。
「汚染水による影響は福島第1原発の港湾内0.3平方キロメールの範囲内で完全にブロックされている」とした安倍首相の発言を、小出裕章・京都大学原子炉実験所助教は「嘘である」と断言した。(ラジオフォーラム)

◇汚染水は港湾外に出ている
ラジオフォーラム(以下R):「汚染水による影響は福島第1原発の港湾内で完全にブロックされている」という安倍首相の発言は、科学的見地から見て正しいものなのでしょうか。

小出:そんなことあり得るはずがない。海というのはみんな繋がっています。汚染は福島第1原子力発電所の敷地から流れ出て、結局は全ての海に流れていってしまうのです。その時に薄まっていくというだけであって、どこかで完全にブロックされるなんてあり得ません。

R:漏れ出さないように、港湾内で遮る作業を一応はしているようですが。

小出:スクリーンというものを下ろしているのですけれど、海というものは、満ち引きもあれば、波もあり、海流もある。スクリーンで留めることが出来るはずがない。海水は港湾内と港湾外を出入りしていますし、汚染はもちろん海へ流れ出ています。

R:完全にブロックされているというのは間違いということですね?

小出:間違いというより嘘です。

◇「こんな首長を持っていることが恥ずかしい」
R:安倍首相はまた、「わが国の食品や水の安全基準は世界で最も厳しい。被ばく量は日本のどの地域でもその100分の1程度だ。健康問題については今までも現在も将来も全く問題ないことをお約束します。抜本解決に向けたプログラムを、私が責任を持って決定し、既に着手しております」とIOC委員に向けて説明しました。これらの発言についてはどう思われますか?

小出:ひたすら呆れますし、こんな軽々しい発言をする人を一国の首長に持っていることを私自身は大変恥ずかしく思います。福島第1原発は自民党政権が安全性を確認し、認可した発電所です。自民党政権のトップにいる安倍さんに責任があるのであって、そのことをまず謝罪するのが本当は必要なことだと私は思います。2年半経っても事故そのものを収束できなかったという事実が目の前にあるのです。

◇汚染水問題は無視されてきた
R:小出さんは事故直後から汚染水の漏れを指摘し、タンカーで新潟(柏崎刈羽原発)まで運ぶべきだとか、2011年5月の時点でも、遮水壁を作るべきだと提言されていましたが、汚染水の問題はなぜ今まで持ち越されてきたのでしょう。

小出:原発の敷地内にはピットと呼ばれる地下のトンネルがあり、事故の直後は、海岸に突き出している部分からジャージャーと汚染水が外に漏れているのが見えたのです。それで慌てて割れている部分だけを塞いだところ、多くのマスコミは汚染水問題にもう片がついたと思ったのか、取り上げることがなくなってしまいました。

しかし、汚染水が貯まっているピットにしろ、トレンチにしろ、原子炉建屋やタービン建屋の地下にしろ、すべて地面の下に埋まっており、仮に割れがあっても見えないだけなのです。割れないコンクリートの構造物なんてこの世には存在しません。ましてや地震に襲われていますので、そこら中に割れがあるはずだし、液状化も起きていたかもしれない。当然、穴があいて、汚染水が当時からずっと漏れていたのです。そのことを皆さん、知らん顔しながらきて、今になって汚染水問題が大変だと言っているわけです。

R:汚染水の漏れが発表されたのは7月22日、つまり、参院選の投票日の翌日でしたね。

小出:汚いやり方ですね。
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