◇社会のしくみを変えなければならない
R:家庭で出来ることで、他に有効な手段はないのでしょうか。

小出:妊婦の方、あるいは小さな赤ん坊を持っている母親は、汚染の低い食べ物を食べる、ということをやるべきだと思います。

R:母親たちはどうやってそれを見分ければよいのでしょう。

小出:今、日本というこの国では、1キログラム当たり100ベクレルという基準値を決めて、それ以下ならば安全だから気にするな、という作戦を彼らが打ち出しているため、私たちは一つ一つの食べ物がどこまで汚れてしまっているかを知ることが出来ない状況に追いやられています。

聞き手:1キロ当たり何ベクレルの汚染かを食品にきちんと表記して、消費者が選べるようにするべきだと、小出さんは以前から話をされていましたね。

小出:そうです。それが何よりも大切なことであって、消費者が自分で判断できるようにするのが本当の民主主義だと私は思うのですが、残念ながら、この日本という国はそうではなくて、お上が決めた方針は全て正しいから、庶民の方はそれでやれと言われているのですね。

本当ならば、私たち庶民、或いはひとりひとりの個人がちゃんと情報を得て、判断できる形を作らなくてはいけません。そのような形が作れるように、それぞれの生きている場所で行政に働きかけるなり、選挙というものがどこまで有効か私はますます疑問になってきましたけど、選挙の時にきちんとした候補者を選ぶなり、それほど有効な手だてではありませんけど、それでも一つ一つやるしかないと思います。

福島だけでなく、放射能は広い範囲に拡散された。それは、広い範囲に住む母親と、この国の未来を担う子供たちが汚染されたことを意味する。母親たちの苦悩は、置き去りにされてはいないだろうか。福島第1原発事故を起した社会に生きる私たちひとりひとりには、まだまだやるべきことがある。

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

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