◆「平和」とはほど遠い日常
9月7日、ジャンム・カシミール州スリナガルでは、「カシミールの平和」をアピールする大々的な演奏会が開催された。
だが、この日、カシミールでは、治安部隊を狙った攻撃や発砲事件があいついだ。
同州南部のシャピアンでは、オートバイに乗った4人の若者を準軍隊組織CRPF(中央予備警察隊)が射殺。
警察当局は「殺された4人のうち、1人はパキスタンから越境してきた武装勢力のように見えた」と発表した。
また、事件の直後、プルワマでは警察署に手榴弾が投げられ、警察官9人が負傷した。
スリナガルでは、交通事故の現場から逃げようとした車両にCRPFが発砲し、2人が重傷を負う事件も起きている。
事故は一般車と州政府の高級官僚が乗った車とのあいだで起きたもので、一般車の運転手が、相手が政府関係者の乗った車と分かたため、逃走しようとしたと思われる。
カシミールには「治安部隊特別法」があり、治安部隊や警察による令状なしの逮捕、拘留が認められている。
特別法は、治安当局による安易な発砲行為を認める背景ともなっており、市民の犠牲も絶えない。
インド政府は「平和」を印象づけようとしているが、実態はかけ離れているようだ。
「ここでは60年間、ずっとこういう状態が続いているのです」
治安部隊に親戚を殺されたという市民のひとりファイサルさん(23歳)はそう言った。
【スリナガル 廣瀬和司】
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