◎ 部隊の半分が栄養失調
キム:君たちの中隊の人員はどれくらいなの?
兵士1: 100人位です。
キム:栄養失調の兵士は100人の中で30%位になるの?
兵士1:春になったら50%がそうなりますよ。
キム:いつからそうなったの? 以前はもう少しマシだったんじゃないかな?
兵士2:もうすぐもっとひどくなりますよ。ジャガイモの季節(6月)になったら、ジャガイモばかり食べることになります。七つずつ。
キム:ジャガイモ七つだけ? じっとしていても栄養失調になりそうだ。
兵士2:外に出て作業でもすれば気も紛れるのに、座って勉強ばかりしていると......。
キム:腹が減るといろんな考えが浮かぶだろうね。
兵士1:その通りです。いろんなことを考えます。
キム:君はもともとはどこの部隊に服務していたの?
兵士1:祥原(サンウォン)郡です。
キム:祥原? あそこは平壌(ピョンヤン)だから大丈夫じゃないの?(注2)
兵士1:(市街地への)交通の便が良ければ軍隊の暮らしもましですけど、山の方にいたので大変でした。
兵士2:兵士たちはひたすら山の草を採って食べていますよ。
キム:軍官たちには配給があるの?
兵士2:中隊級にはあるんですが、大隊級にはありません(注3)。
キム:大隊級には無いの? それでも本人はもらえるんじゃないの?
兵士1:本人にはありますが家族になんて......。何ヶ月分も遅れてます。食糧が入ってくれば配給があるし、入ってこなければ無いし。
キム・ドンチョル記者と兵士たちとの会話から、現在の軍隊の実態について、いくつか語ることができる。説明を加えておこう。
1 二人の兵士が、民間人のキム・ドンチョル記者に「何か仕事はないか」と問うているのは、これは「アルバイト」をさせてくれという意味である。
軍人は衣食住を国家から供給されて暮らしているわけだが、それでは到底足りず苦しいため、現金であれ食べ物であれ、労働力を提供することで不足を補いたい わけだ。
配給のない庶民の場合は、市場に出て商売に精を出すことで生計を維持しているが、軍人が市場に立つわけにはいかない。このように、兵士が「アルバ イト」をするために民間人に「御用聞き」をするのは日常茶飯事だという。
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