◇現役兵士が語る軍隊の食糧難 将校家族の配給も途絶
（承前）平安北道でキム・ドンチョル記者が取材した二人の人民軍兵士は部隊の食糧事情について詳細に語った。彼らの証言から明らかになった人民軍隊の実態について解説する。
取材：キム・ドンチョル 整理／解説：石丸次郎
1 二人の兵士が、民間人のキム・ドンチョル記者に「何か仕事はないか」と問うているのは、これは「アルバイト」をさせてくれという意味である。軍人は衣食住 を国家から供給されて暮らしているわけだが、それでは到底足りず苦しいため、現金であれ食べ物であれ、労働力を提供することで不足を補いたいわけだ。
配給のない庶民の場合は、市場に出て商売に精を出すことで生計を維持しているが、軍人が市場に立つわけにはいかない。このように、兵士が「アルバイト」をするために民間人に「御用聞き」をするのは日常茶飯事だという。
2 おかずにするために野草を取りに出ているというのも情けない話だ。軍官（将校）にも満足な副食がなさそうである。部下は上官の命令によっておかずを調達しなければならない日常なのだろう。
3 「自体解決」せよとは、つまり上部からは食糧が供給できないので部隊（あるいは「軍官学校」）では、責任持てないから自活せよと言われているということだ。
「自体解決」しなければならないのは食糧だけではない。キム・ドンチョル記者は次のように述べる。
「中隊は、小隊三つで成り立ち、一〇〇人規模。部隊の施設の修繕や必要な資材の購入も『自体解決』しなければならなくなっている。といっても、中隊 長がその資金を出すのか？一般兵士に出させるのか？それは到底無理なので、中隊に支給される食糧を売って資金にすることがよくある。
開城（ケソン）で服務している兵士の話では、開城には石炭がないから冬場は暖房用の薪を伐ってこなければならないという。そのために薪を運ぶ車を調 達することになるが、ガソリンだけは部隊で負担してくれと言われるそうだ。結局金を作るために食糧をジャンマダン（市場）に売って賄うことになる。他に売 れるものは部隊にないから」
財政難のために、軍部隊では食糧のみならずあらゆるものが足りず、まるで「自分の足を食う蛸」のように、市場になけなしの食糧を売り払う悲惨な状況にあるようだ。
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