軍隊に行って飢えて死んだという話は山ほどある。兵士が死んだら、両親に部隊から通知が来る。両親が駆け付けると「下痢をして死んだ」と説明を受け るのだというが、親も馬鹿ではないから、遺体を見れば飢えて死んだことくらいすぐ分かる。こういった話はすぐに広まるので、息子の入隊が決まると親たちは かわいそうで泣く。
「戦争が起きた時に戦う軍隊はどこか別にある」と住民たちは皮肉まじりに言い合っている。どこに隠しているのだろうか。
※部隊から家に帰されるのは「病保釈」と言われ、そのまま部隊においておくと死ぬかもしれないと判断される場合だという。この最悪の状態は「虚弱3 度」と呼ばれている。少しましな「虚弱1~2度」で家に帰す交換条件として、部隊は親に食糧数百キロを要求している、という内部からの報告もある。
◆物乞いする軍隊、生理がとまる女性兵士 キム・ドンチョル
若い兵士たちがわが家のドアを叩いて「食べ物を分けてほしい」「何か仕事をさせてほしい」と懇願するようなことが何度かあった。他所に住む知人たちも自分の家にもよく来ると言っていたので「兵士の物乞い」が増えているのは間違いないだろう。
2011年になって食糧だけでなく塩がないのも深刻だ。軍のおかずなんて塩づけした白菜や干し菜の汁ぐらいだが、上部から塩がちゃんと供給されず、 味付けができなくて、兵士が無塩の食事なんかできないと不満が出ているそうだ。それで実家からお金が送られてくると塩や化学調味料を買って自分用にポケッ トに入れて持ち歩いているという。
女性兵士たちも痩せて本当にかわいそうだ。げっそりして軍服がぶかぶかになってしまったのが大勢いる。胸もぺったんこだ。知り合いの娘が軍に服務中でその本人に話を聞かせてもらったのだが、入隊してしばらくすると大半が栄養不足で生理がとまると言っていた。
逆に生理があると、軍医から呼ばれて「ほとんどの人は生理がないのに、同じものを食べて、同じ訓練をしているのに、なぜ生理があるのか調べたい」と言われたという。その娘は、部隊内のことは絶対に口外するなときつく教育されていると言っていた。
栄養失調になった兵士たちは、自由時間でも部隊から外出を禁止されているそうだ。一般住民に恥をさらすことになると考えているんだろうけれど、もう軍人が栄養失調だなんて世間が皆知っていることなのに。
春の入隊の季節になると、子どもを軍隊に送る親は泣く。別れが悲しいからではなくて、軍隊で飢えることになる子どもの身の上を案じて泣くのだ。(続く)