◇業務負担軽減して人民統制に専念させる目的か 内部協力者伝える
(カン・ジウォン)
北朝鮮で最近、人民保安員(警察官、以下「保安員」)の職務内容の見直しや待遇を改善する動きがあることが、内部への取材で分かった。
北部の両江道恵山(ヘサン)市に住む取材協力者は8月下旬、アジアプレスとの通話で
「平壌の人民保安部(警察庁にあたる)から高位の幹部がやってきて、22日に恵山市の保安署で行われた会議に出席。保安員たちの待遇改善と役割強化に向けた方法を提示した」と明かした。
取材協力者はさらに
「この会議では、幹部が全国の道、市、郡の保安署に『輸出源泉動員課(中国との貿易で外貨を稼ぐ部署)』を新設し、そこから得られる資金で保安員たちの後方事業(暮らしの問題)を解決し、寄付や供出などの経済的負担を減らすよう指示が出された。また、保安署内部の「捜査課」と「監察課」の人員を大幅に増員し、予審処、捜査処と教化所(刑務所)に犯人護送車を配置することになった」と語った。
北朝鮮の人民保安部は国防委員会に所属しており、治安維持が主な任務。また、住民の監視や身元調査、反国家・反革命行為の摘発および処罰なども行っている。捜査課と予審処では事件捜査を主に担当する反面、監察課では工場、企業所(会社)、各生産単位の稼動や出勤状況を調査・監視し、社会主義原則や中央の方針を守っているかを監督する任務を負っている。
だが実際には、人民保安部は賄賂や汚職にまみれ、こうした任務を満足に遂行できない状態が続いていた。北朝鮮の経済が困難を極める中、保安員といえども規定の食糧や物資の配給を受け取れていないためだ。担当する企業所や人民班(末端の行政組織)内部の各種の違法行為に目をつぶる代わりに、賄賂を受け取って生活を維持しているのが実情なのだ。
前出の取材協力者は保安員の職務内容の変更についても伝える。
「会議では、これまで保安員の仕事であった住民の居住管理、動向把握などのいわゆる『文件(住民票)整理事業』を業務から外し、さらに各種の行事や会議、社会動員などからも保安員を除外することが伝えられた。保安員が本来の役割を十分に遂行できるように配慮したものだ」
という。
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