◇「不良党員」の除名を予告 子どもの将来にも影響
カン・ジウォン記者 石丸次郎
北朝鮮で、8月末から行われている朝鮮労働党の党員証の再交付(交換)作業を10月10日の党創建記念日までに終わらせると同時に、過去、党員生活を誠実に行わなかった「不良党員」に対し「出党(除名)」措置などの懲罰をとる動きがあることが分かった。北朝鮮内部の取材協力者が明かした。
咸鏡北道会寧(フェリョン)市に住む取材協力者は9月、アジアプレスとの通話で、
「10月10日に新しい党員証が交付される。また、党員としての組織活動を怠ったり、職場に出勤していなかった者は、『出党措置』(除名)するよう、地域の党組織に指示が下された」と伝えてきた。
朝鮮労働党は国家の全分野を掌握する権力組織だ。あらゆる国家政策は、労働党の指導と統制の下で推進される。このため、党員になることは北朝鮮社会において出世や成功の必須条件となっている。例えば協同農場の「作業班」の班長になるためには、10年間の軍服務経歴と4年制大学の卒業資格とともに、党員であることが絶対に必要である。
党員は通常、居住地域の党組織に所属し、党費の納付、生活総和(相互批判集会、週1回程度行われる)、組織から与えられる任務の遂行といった基本的な「党生活」を行う一方、勤務する工場や企業所、団体などで指導的な役割を果たす。
北朝鮮では最近まで、党員に対する処罰は曖昧になってきた。90年代中盤以降の国内経済の破綻によって、一般党員はもちろん、党幹部までが組織生活を二の次にして、生活の維持のために農業や商売などの副業を始めざるを得なかったためだ。
「出党処置」について、事情に詳しい脱北者のハン・ソンチョル氏(仮名、09年に脱北)はこう説明する。
「党員にとって出党措置は、北朝鮮における政治生命の剥奪を意味する。一度出党させられた人物は、入党できなかった人物よりも低く評価され、再入党は『方針』(指導者の直接の指示命令)が出たり、身を犠牲にして党に大きく貢献するようなことがない限り難しい」
また、「出党措置」を受けたことは、国家が管理する詳細な個人情報(文献と呼ばれる)に記録される。本人はもちろん、その子供たちにも「親が出党措置を受けている」と記録される。そのため、子どもが社会人になった際の就職や出世などの考課にも影響するのだ。
それでは、今回の党員に対する規律強化の目的はなんだろうか?先代の金正日時代を振り返ってみよう。
故金正日総書記は、「朝鮮労働党は金日成同志の党で、党の歴史はすなわち金日成同志の革命活動の歴史である」と論文で言及したことがある。すなわち、「労働党を金日成の党」とすることで、唯一の後継者である自分だけが党組織を動かすことができるとしたのである。
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