◆声をあげられない福島の人たちのためにも
東京電力福島第一原発事故で避難を余儀なくされたとして、国と東京電力を相手取り損害賠償を求めている原告のひとりで、子ども2人と母子避難をしている渡辺美華さんは
「安定剤を飲まなくてはいけない時期もあった。離れて暮らしている父親が会いに来てくれるのは嬉しいが、別れるのがつらい。この状況を国や東電に知ってもらいたい」
と訴えた。
福島県相馬市から滋賀県栗東市に避難している佐藤勝十志(かつとし)さん(52)も原告のひとりだ。
事故後、ショックで体調を崩した妻の入院生活は1年に及んだ。佐藤さんは、福島と滋賀を行き来して仕事を続けてきたが、取引先の多くが震災の影響を受け、佐藤さんが経営する設備会社も休眠状態になっている。市営住宅の無償提供は来年3月で打ち切られる予定だ。「このままでは生活を再建できない」と語る。
佐藤さんが福島に戻った時に感じたことは、「福島では避難をしたいということがはばかられる空気がある」ということ。
「周りにみんながいるときには『帰ってきて』と言われるが、一対一になると『子どもだけでも夏休みに保養に行かせて』と何人にも言われました」。
この裁判は原告だけではなく、声をあげられない人、事故が起こるかもしれない原発立地自治体、未来のための裁判であるという。
京都地裁でもこの日、避難者33世帯91人が集団提訴した。9月30日には、神戸地裁で54人が集団提訴した。(おわり)
<<原発事故 上 へ