◆福島第一原発事故が発生直後に原発7基の運転を停止
ドイツに20年近く住んでいた元ドイツ和光純薬社長の藤澤一夫さんにドイツの脱原発政策と再生可能エネルギーについて聞く。2011年3月の東京電力福島第一原発事故を機に脱原発へ政策を転換したドイツに対して、日本は原発を再び稼働させ輸出しようとしている。その違いは何なのか。(森山和彦、矢野宏 うずみ火新聞)
福島第一原発事故が発生した直後の2011年3月15日、ドイツは古い原発7基の運転を停止し、原発の安全点検を原子炉安全委員会に委ね、各界からの専門家からなる倫理委員会を設置して今後のエネルギー政策の在り方が検討された。これを受けて5月末、メルケル政権は脱原発関連法案を作成、連邦議会に提出した。
◆「フクシマ前」は推進派だったメルケル政権が...
議会でメルケル首相は「フクシマ前、私は核エネルギーの残存リスクを容認していた。なぜなら、安全基準の高い技術立国ではそれは起こらないという人間の判断に確信を持っていたから。問題はここにある。日本で発生したような巨大地震や破壊的な津波がドイツでも起こるかどうかが問題ではない。リスク許容の信頼性と確率分析の信頼性だ」と、脱原発を宣言した。
下院、上院でも圧倒的多数で可決。ドイツ政府は、22年までにドイツにおける17基すべての原発を閉鎖することを決め、2050年までに再生可能エネルギーの電力消費に対する割合を80%にまで引き上げるという。
「メルケル政権は原発を推進していた」と藤澤さんは説明する。
「前の政権が脱原発の方針を決定したが、メルケル政権はその方針を撤回。10年には既存の原発の操業延長を決める法律を作った。この時、国民から大反発が起きた。チェルノブイリ事故でヨーロッパ全土が汚染され、牛乳が飲めなくなり、子どもたちが砂場で遊べなくなった。この経験がドイツ国民に怒りの声を上げさせた。大規模なデモが各地で起き、緑の党が大躍進した経緯がある。そして日本で3・11が起きたのです」
現在、ドイツの再生可能エネルギーが電力に占める割合は20%。今後、増えていくのか。藤澤さんは「水力、風力、バイオマス、太陽光、地熱などあらゆる再生可能エネルギー源をミックスすることが大事。それぞれ単独では目標を達成することはできない」と話す。
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