◇福島第一原発の敷地は「放射能の沼」のような状態
汚染水問題が報道されるようになって2か月以上が過ぎた。しかし、漏れ出た放射性物質が私たちの生活にどれほど脅威を与えるものであり、また、どれほど影響を持つものなのか、正しく理解している人は少ないだろう。京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに、汚染水漏れがどれほど危険なものなのか、分かりやすく解説してもらった。(ラジオフォーラム)
ラジオフォーラム(以下R):この件はレベル3という規制委員会の報告がありましたけれど、この汚染水の危険度を改めて小出さんの口から教えて頂くとどういうことになるのでしょう。
小出:まず皆さんに考えていただきたいのは、汚染水問題は今始まったことではないということです。今回の汚染水漏れの深刻さがレベル3と評価されていますけれど、汚染水問題というのはレベル7の事故が起きた2011年3月11日からずっと続いているのであって、レベル7の事故が今現在も続いていると、そのように認識してほしいと思います。
そして、最近発表されたレベル3という評価についてですが、これは一つのタンクから300トンの水が漏れてしまい、その中に1リットル当たり8000万ベクレルの放射性物質が入っていたというものです。1リットル当たり8000万ベクレルで300トン分と考えると、24兆ベクレルという総量になります。その放射性物質の正体はストロンチウム90 だと私は思います。
R:値が大きすぎてイメージにしくいですね。
小出:広島・長崎の原爆が撒き散らしたストロンチウム90の数分の1ぐらいです。たった1つの汚染水タンクから300トンの水が漏れたがために広島原爆とそんなに変わらないぐらいの放射性物質が地下に流れてしまったと言っているわけですね。ですから、猛烈に深刻なことであるわけですけれども、そんなことは今初めて起きたわけではないのです。ずっと2年半にもわたって漏れてきたのです。そちらの方がもっと深刻だと私は思います。
R:300トンで原爆の数分の1となると、2年半だとものすごい数になりますね。
小出:それだけでも数百発分になってしまうと思います。
R:相手が海なので薄まるだろう、という意見もありますが、どう思われますか。
小出:私たちが今心配している放射性物質は、先ほど聞いて頂いたストロンチウム90であるとか、セシウム137という放射性物質なのですが、そうした放射性物質は30年経たないと半分になってくれないのです。つまり、一度海に流してしまえば、一方で薄まりながら、一方ではこれから長い期間に渡って生物がそれを濃縮していくという作用が続いていくことになります。
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