◆「ネットカフェ難民」など把握困難な人増加
厚労省の調査によると、ホームレスの数は、2003年に25296人いたが、2013年には7671人に減っている。では、ホームレス問題は解消に向かっているのか。貧困問題に詳しい社会活動家の湯浅誠さんに、ホームレスの実情とこれからの課題について聞いた。(ラジオフォーラム・鈴木祐太)
◇ホームレス状態の人は増えている可能性がある
-厚労省の調査ではホームレスの数は減少傾向にありますが、湯浅さん自身はどのようにお考えでしょうか。
「厚労省の調査は、テントの数を数えるという目視調査だ。大阪でも、東京でも、テントを立てさせないという政策がこの10年続いているため、テントを構える人の数を数えれば、ホームレスの数が減っているということになってしまう。もう一つ、ホームレスの定義は路上で寝ている人。だから、ネットカフェで寝ている人、マクドナルドで夜を明かす人などは数に入らない」
-では、ホームレスの数は増えているのでしょうか。
「そこまでは分からない。支援団体の炊き出しの数は減っている。だから、路上で寝起きしている人の数は多少減っているだろう、と考えている。しかし、脱法ハウスに泊まっている人をはじめとした広い意味での『ホームレス状態』に陥っている人は増えている可能性がある。数を正確に把握するのは本当に難しい。例えば、ネットカフェで、誰が長い間泊まっていて、誰が一時利用なのか、それを区別するには、直接聞くしか方法がない」
◇止まらない低所得化
-ホームレスが社会問題化したのはいつからでしょうか。
「バブルが終わった90年代中頃に、日雇い労働者の職がなくなったことが発端です。それから20年が経ち、今のホームレスの中には、日雇い労働の経験がない人が多くなった。大阪の釜ヶ崎、東京の山谷に行ったことのないホームレスがどんどん増えている」
-普通の人がホームレスになっているということですね。
「はい。大きな原因は日本全体の低所得化が止まらないこと。日雇い労働者自体がホームレスに近い状況にあるというだけでなく、年金生活者の生活水準も下がって、ホームレスの生活水準に近くなっている。派遣や契約といった不安定な条件で働いている人も同様です。いろんなルートでホームレス状態に陥りやすくなっている。そうして、見た目では分からないけど、路上で生活をしている人がたくさんいる。
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