~北朝鮮の若者たちが韓流スターファンになるまで~
絶対にありえないことが、北朝鮮で起こった。多くのの若者たちが、韓流ドラマのスターたちに熱狂するという現象が起こったのである。2004年前後のことである。ぺ・ヨンジュンやチェ・ジウ、クォン・サンウらのスターたちの北朝鮮での知名度は、日本でのそれに決して劣らないだろう。
厳格に統制されてきた韓国の映像情報は、どのようにして北朝鮮国内に入り込み、拡散していったのだろうか? 韓流ドラマを地下工場で大量にコピーして闇市場に流していたリャン・ジョンウ氏(仮名、平壌在住の30代男性)が、その体験を詳細に語った。
◇ 外国映画と保衛部要員向け映画が密かに流通
私は平壌の北に位置する平安南道に生まれ育った。私の家もそうだったし、朝鮮の一般家庭でも、一番の憧れの電化製品といえば、長くVHSのビデオデッキだった。値段が高かったので、お金のある一部の日本からの帰国者や幹部以外で、ビデオデッキを持っている家はほとんど無く、休日や祝日になると、ビデオデッキのある知人の家に集まったものである。
平壌市内だけで、土曜日と日曜日に放送されていた「万寿台テレビ」で流れた番組を録画したものを見るのがその目的であった。
朝鮮では海外の映像やニュースにほとんど触れることができない。全国放送の朝鮮中央テレビに出てくる外国の消息といえば、朝鮮より貧しいアフリカの国々がほとんどである。「万寿台テレビ」の番組内容は、朝鮮中央テレビとは違い、欧米資本主義のものを含め、外国の映画や漫画(アニメーション)、短い国際ニュースが放送された(旧ソ連や中国、キューバのものがほとんどだった)。
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