集団的自衛権行使と連動して戦争国家へ
秘密保護法案では、ここまで詳細な調査事項は規定されていない。しかし、スパイ・テロ活動との関係という事項が曖昧であり、スパイ防止やテロ防止の名目で、家族・同居人の情報にとどまらず、密かに交友・異性関係や関係諸団体、外国人との関係、海外渡航歴などの情報も収集されるおそれがある。現に政府は調査事項に海外渡航暦を加える方針だ。

そうなれば、本人から芋づる式に広範囲の人たちや諸団体の情報が集積され、疑いを持たれると、本人ともども公安警察や自衛隊情報保全隊に監視される懸念も出てくる。自衛隊情報保全隊がイラク戦争に反対する市民団体や個人の情報収集・監視をしていた事実と考え合わせると、不気味さは増す。

秘密保護法は「知る権利」や言論の自由の侵害につながるだけでなく、監視社会化につながるおそれが高い。安倍政権の集団的自衛権行使に向けた解釈改憲のごり押しと、秘密保護法案は連動している。その目指すところは、情報隠蔽と厳罰と監視体制で市民の目と耳と口をふさぎ、日本を海外派兵と戦争のできる国に変えることにほかならない。

【吉田敏浩プロフィール】
77年より、ビルマ、タイ、アフガニスタンなどアジアの多様な民族世界を訪ねる。85年3月から88年10月まで、ビルマ北部のカチン州とシャン州を長期取材し、その記録をまとめた『森の回廊』(NHK出版)で、第27回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
近年はおもに、現代日本社会における生と死の有り様、「戦争のできる国」に変わるおそれの高まる日本の現状を取材している。
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