チェルノブイリ事故:福島第一事故
=1万3650ペタベクレル:1万1340ペタベクレル
事実は、チェルノブイリ事故を少し下回っているだけで、とても「7分の1」という差が有るわけではないということだ。では、なぜ「7分の1」という表現が横行するのか。それは、放出量を総量で比較せず、別の値で比較しているからに他ならない。使われているのはヨウ素換算倍率係数だ。

ヨウ素換算倍率係数の罠
このヨウ素換算倍率係数とは、放射性物質の危険度に応じて国際原子力事象評価尺度(INES)に定められているもので、危険とされるものほど値は大きくなる。当然、ヨウ素131の係数は1であり、仮にヨウ素131が10ペタベクレル検出された場合は、その値(ヨウ素131等価)はそのまま10ペタベクレルとなる。では、他の物質はどうか。セシウム137 のヨウ素換算倍率係数は40、ストロンチウム90は20だ。

ところが、係数が0のものもある。放射性希ガスがそれだ。原発事故の関連で言えば、キセノン133とクリプトン85がそれにあたる。何れもヨウ素換算倍率係数は0 とINESで定めている。

福島第一の事故では、このキセノン133とクリプトン85が大量に環境中に放出されたことがわかっている。その放出量について旧原子力安全・保安院は推計で1万1000ペタベクレルとしている。因みにチェルノブイリではこれらの物質は6500ペタベクレルが放出されている。前述のIAEAの報告書にある「放出された全放射性物質の約50%は希ガス【放射性キセノン=半減期5.25日など】によるものであった」というのがそれだ。

この為、希ガスは、大量に放出されようが、ヨウ素換算倍率係数の0をかけてしまえば値は0になってしまう。これによって、福島第一事故で放出された放射性汚染物質の量は、843ペタベクレルに修正される。チェルノブイリ事故は6420ペタベクレルに修正される。
これが「7対1」の正体なのだ。(続く)
帯刀良(たてわき よい ジャーナリスト 大手放送局で20年間ドキュメンタリーなどを制作。アイ・アジアの設立に参加)
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