◇被曝を測定する仕組みを
R:郵便配達、あるいは他の民間配送業者の方々は、福島第一原子力発電所の周辺でお仕事をされるときに、低線量の被曝による健康被害に不安を持っているといわれています。こうした問題に対して明確な対策が取られていないことについて、何かアドバイスはありますか。
小出:当然、汚染地帯でお仕事をされている方は、被曝をしてしまっています。屋内で働く人よりも、屋外で働く人の方が被曝量は多くなってしまいます。郵便配達なり、他の仕事をする人も、いわゆる放射線業務従事者という特殊な仕事をする人ではないですから、本来であれば1年間に1ミリシーベルト以上の被曝をしてはいけません。
ただ、このような基準は、もうほとんど守れないということになっていますので、私としては、ちゃんと被曝の管理をすることが大切だと思います。その人がどれだけの被曝したのかいうことを雇用者がきちっと測定をして、一人ひとりの労働者にそれを通知しなければいけないと私は思います。むしろ、労働者の方からは自分がどれだけの被曝をしているのか、きちっと測定をするような仕組みを作ってくれと雇用者に要求するべきだと思います。
R:要するにその点においても国がもっと前面に出て、きちんと労働者の方々、働く環境を管理していくことが大切だということですね。
小出:そうです。被曝をしているのは労働者だけでないわけで、そこで生活をしている人ももちろん被曝をしているわけです。そういう人たちには、本当は国がきちっと測定をして一人ひとりに被曝量を通知しなければいけないと思います。残念ながら、今の日本の政府はあまりにもデタラメで、何もやろうとしていないのです。
自然災害に対する備えも、労働者の被曝測定も、国が責任を持ってやらなければならないことである。こうしている間にも、汚染地帯では人々が被曝し、福島第一原発では汚染水が新たに発生し、事態は悪化の一途を辿っている。一人でも多くの人が声を上げ、国を動かしていかなければならない。