台風や大雨が来るたびに、福島第一原子力発電所から放射性物質が拡散される。自然現象や災害に対して、東京電力のずさんな対応が続く中、原発労働者を始め、地域住民の被曝が積み重なってゆく。出口の見えない収束への道筋を、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんはどう見ているか。(ラジオフォーラム)

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん
ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

◇年に1度は想定内
ラジオフォーラム(以下R):最近のニュースの中で、福島第1原発の汚染水タンクの周辺に設けてある、漏水防止用の堰、まあ溝のようなものですね。そこが雨で溢れ、放射性物質をたくさん含んだ水が溢れるという大きな事故がありました。その中で発表されたコメントによると、高さ約30センチの堰、これが年に1回程度は溢れるようなことを考えていたというわけです。もともと原発というのは1000年に1回しか事故を起こさないくらい頑丈だと言っていたのに、「年に1回」って、これどういうことでしょうか。

小出:要するに、堰を60センチにしようと思えば、その作業をしなければいけませんし、労働者の被曝が積み重なってしまうということなのですね。

福島第一原子力発電所の敷地の中は、現在、猛烈に悪い環境、放射線が飛び交ってしまっている環境でして、十分な対策を取ろうとすればするだけ、労働者の被曝が増えてしまいます。一体どこまでやってくれ、と言えるか私自身も大変心苦しい立場にあります。

手を抜けば、もちろん、また困った事態になるわけですけれども、どこまでも手を入れようとすれば、労働者の被曝が増えていってしまう。ですから、どこで妥協をするか、ということしか、今はないわけです。

元々、1000年に一度しか事故を起こさない、その事自体が間違っていたわけですし、彼らが嘘をついてきたわけですね。それで、このような事態に追い込まれてしまっていて、本当に今、どうしていいのか私自身もわからないという苦しい状況にあります。ですから、東京電力としては、堰の高さを30センチぐらいにして、年に一回は諦めるという、そういう判断にしたのだと思います。

R:このような状況にしておいてもいいのでしょうか?

小出:事故収束を東京電力に任せている今の体制そのものが間違えていると私は思います。東京電力というような企業では到底乗り越えられないところにきてしまっているわけですから、東京電力を倒産させて、きちっと精算をする。その上でもう仕方ない、もう日本というこの国がやるしかないということを決めて、お金がかかろうとなんだろうとやるという、そういう決断をしなければいけないのだと思います。
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