軍用車両が並ぶ、沖縄の米海兵隊基地キャンプ・ハンセン(撮影:吉田敏浩)
軍用車両が並ぶ、沖縄の米海兵隊基地キャンプ・ハンセン(撮影:吉田敏浩)

 

◇基地の写真撮影だけで処罰も
では、沖縄ではどんな事態が予想されるのか。加藤弁護士は次のように語る。
「たとえば、日本政府は1996年に米側からオスプレイの配備計画を知らされていながら、反対運動が高まるのを恐れ、ひそかに米側に公表しないよう求めてきました。県民の暮らしと安全に関わる重大な情報が、政府の都合で隠されてきたのです。もし秘密保護法ができれば、オスプレイ配備計画のような情報は当然、特定秘密に指定されます。情報隠蔽はよりひどくなるでしょう」

米国軍人が犯した犯罪の取り扱いなどを定めた日米地位協定についても同様だ。加藤弁護士が続ける。
「地位協定の運用は日米合同委員会で協議されています。その詳細な秘密の合意事項が、アメリカの公文書や日本の法務省の文書などで明らかになっているのに、外務省は認めていません。これらも特定秘密にされ、闇に葬られるのでしょう」

カメラを手に沖縄で基地の実態調査をしてきた、市民団体「沖縄県平和委員会」の大久保康裕さんは、次のような不安を漏らす。
「日米軍事一体化で自衛隊と米軍の実戦的な共同訓練、基地の共同使用が進んでいます。政府は米国と共有する情報の保全のために秘密保護法が必要だとしています。スパイ防止やテロ防止の名目で、米軍と自衛隊の基地や軍事活動に特定秘密の網をかぶせるでしょう。基地の外から施設や訓練の様子などを撮影することが特定秘密の取得と見なされ、処罰されるかもしれません」

こうした懸念は的外れではない。秘密保護法案を担当する内閣情報調査室の橋場健参事官が、こう説明する。
「自衛隊と米軍の訓練も、基地の警備態勢・措置も、防衛大臣ら行政機関の長が秘匿の必要性を判断したうえで、特定秘密の指定対象になりえます」

撮影が、同法案第23条で人を欺く・脅迫・窃取などとともに処罰対象とされる、「(特定秘密)保有者の管理を害する行為」による「特定秘密」の取得に該当するかどうかについては、「どちらとも断定的には言えず、個別具体的ケースに応じて判断することになる」と、否定はしない。

沖縄ではすでに、法案の内容を先取りするような事態が起きている。沖縄タイムスが自衛隊那覇基地の対潜水艦作戦センターの建物外観の撮影を申し込んだところ、「場所を知らせることで第三国に狙われる可能性がある」として、許可が出なかった。建物
は基地の外から見え、1995年には撮影許可も出ていたにもかかわらず、だ(同紙2013年10月28日)。

法案が成立したら、軍事・外交情報の秘密の壁はますます厚くなる。基地と軍事活動の実態、新基地計画、地位協定の運用などの調査・解明も、より難しくなる。
報道関係者だけでなく、米軍機の騒音や事故、米兵犯罪、環境破壊など基地被害の責任を追及し、基地建設反対を訴える市民や弁護士などの活動も萎縮させられるのは明らかだ。
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