燃料プールは宙吊り状態で周辺は汚染深刻 作業員確保が重要課題
福島第一原発4号機の燃料棒の取り出し作業が、事故から2年8ヶ月を経て、ようやく始まる。昨年7月に燃料棒集合体2体が試験的に取り出されて以来のことである。やらなければならない作業であるが、一歩間違えると、これまでの数百倍もの放射性物質が飛散する危険性がある非常に危険な作業である。京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんに、この燃料棒取り出し作業について聞いた。(ラジオフォーラム)
◇特殊な爆発が起きた4号機 使用済み燃料プールは宙吊り状態
ラジオフォーラム(以下R):11月に入って、この燃料棒を取り出す予定が組まれていますが、これは廃炉作業の一環と聞いております。まず、2011年3月11日の事故後、4号機はどういう状態にあるのでしょうか?
小出:2011年3月11日、4号機は定期検査中でした。そのため、原子炉の炉心の中には、燃料は一切ありませんでした。全ての燃料が使用済み燃料プールというところに移されていた状態で事故に突入しました。
R:原子炉の中には燃料棒がなかったにもかかわらず、事故になったのですね。
小出:大量の使用済みになった燃料棒がプールの中にあるという状態で事故になりまして、運転中でなかったにもかかわらず、4号機の原子炉建屋では爆発が起こり、建屋が大規模に破壊されてしまいました。そして、4号機の場合には、かなり特殊な爆発が起こりました。
R:それはどういう爆発だったのですか。
小出:原子炉建屋の最上階にはオペレーションフロアというところがあって、1号機の爆発も3号機の爆発もそこだけが吹き飛んでいるのですが、4号機の場合には、オペレーションフロアと呼んでいるフロアの更にその下の階までもが、爆発で壁が吹き飛んでしまっているのです。実は、その階に使用済み燃料プールが埋め込まれていたので、使用済み燃料プールは宙吊りのような形になってしまいました。
R:建物の中に、宙吊り状態になったのですか?
小出:そのことの危険性に東京電力もすぐに気がつきました。使用済み燃料棒プールが崩れ落ちないよう、下の階から鋼鉄製の支えを入れて、コンクリートで固めるという工事をやったのですが、その工事自体が猛烈な放射能の汚染環境の中で行われたため、しっかりとした工事が行われたのかどうか、私は大変不安に思っています。支えの鉄骨を建てようと思ったその階の床すら爆発によって損傷しているわけですから、支えを入れられたのは使用済み燃料プールの約半分だけなのです。
R:残りの半分はどうなっているのですか。
小出:残りの半分は何の支えも入れられないまま、結局、宙吊り状態のまま今日まできてしまっています。その使用済み燃料プールの中には、大量の使用済み燃料棒が眠っています。私の計算によると、広島原爆が撒き散らしたセシウム137の1万4千発分がまだ、プールの底に眠った状態のままになっています。
もし、大きな余震が起きて、使用済み燃料プールが崩れ落ち、中に水を蓄えることができないような状態になってしまいますと、また燃料が熔けてしまうわけですし、大量の放射性物質がまた吹き出してきてしまうということになるわけです。ですから、燃料棒を少しでも危険の少ないところに一刻も早く移さなければいけません。
次のページへ ...