◆ 政府・軍/少数民族勢力/民主化勢力の三者対話による国民和解へ
少数民族武装勢力側は、かつて1990年代に軍事政権がやったように、停戦協定した後に延々と政治協議を先送りにされるのではないかという不信感を拭えない。彼らにとって、「全土停戦協定」調印は、その後の政治協議の開始でなければならない。
「全土停戦協定」調印後、2カ月以内に「政治協議の枠組み」を策定し、その後2カ月以内に政治協議が開始される。「政治協議の枠組み」がほぼ固まった段階で初めて「全土停戦協定」の調印が行なわれるだろう。

WGEC案を元に、今後を展望してみると、2015年の選挙6カ月前までに連邦会議が終了し、「連邦合意」が実現化されていくことになる。「連邦合意」をどのように実現させていくのか、WGEC案は明確には語っていないが、連邦会議で決議された「連邦合意」について、選挙を通して国民にその是非を問うべきだろう。国民の支持を得られれば、新しい議会は国民の本来の意向を反映するかたちとなり、議会の中から憲法改正を実現する可能性がより高まるはずだ。

しかし、たとえ選挙で民主化勢力と少数民族勢力が大多数の議席を獲得したとしても、議会の四分の一は初めから軍人に割り当てられており、総議員の四分の三以上の賛成がない限り改正できないように規定している現在の憲法下では、憲法改正に国軍の支持が必須となる。
すなわち、ミャンマーの民主連邦制国家への再編には、国軍を含めた政府と少数民族勢力、民主化勢力の三者が協力するしかない。現行憲法は非民主的で、国軍の権力を保護し、憲法改正を国軍が阻止できる規定となっているが、ミャンマーが長年の桎梏を乗り越えて国民和解を実現するには、むしろ乗り越えられるべき試練なのかもしれない。【赤津陽治】
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