政府と唯一停戦協定を結んでいないカチン独立機構(KIO)最大拠点ライザ。10月30日から11月2日まで、18の少数民族武装組織首脳たちがここに集まり、テインセイン政府が推し進める「全土停戦協定」署名について、協議が行われた。(撮影:筆者    2012年3月、ライザ)


真の連邦制求める18少数民族が集結

◆封印は、調印によって解かれるのか
アウンサンスーチー氏の国政参加、政治囚の解放など、改革が進むといわれるミャンマー。今,半世紀以上続いてきた内戦に終止符を打つべく、「全土での停戦協定」調印の計画が進行している。半世紀前に、軍のクーデターで封印されてきた、少数民族の「真の連邦制」の夢は、「全土停戦協定」調印を機に、現実のものとなるのか。民族問題をめぐるミャンマーの最新情勢を赤津陽治が報告する。

◆少数民族武装勢力が集結~ライザ首脳会議
10月30日から11月2日まで、ミャンマー北部カチン州ライザでは、少数民族武装勢力の首脳会議が開かれた。中国・雲南省と国境を接するライザは、少数民族カチン族の最大武装勢力「カチン独立機構(KIO)」の最大拠点だ。

KIOは、2011年6月の停戦崩壊以来、ミャンマー国軍との間で戦闘状態にある。死傷者の数は、公式には明らかにされていないが、国軍筋の情報では、2012年の9月から12月までの3カ月間だけで、355回の戦闘があり、国軍兵士1000人以上が死傷したという。

国軍側は、昨年12月から今年1月にかけて、戦闘機やヘリコプターによる空からの攻撃や砲撃でライザ周辺に猛攻撃を仕掛けた。KIO軍事部門のカチン独立軍(KIA)で教官を務める元国軍軍人は、「国軍史上例のない戦費と戦力がつぎ込まれた攻撃」と語った。KIAの重要拠点は攻略され、ライザは陥落したのも同然という状況に陥っていた。
そのライザに18の少数民族武装組織首脳が一堂に会することができたのも、10月10日の政府側とKIOの停戦会談で、政府側が同会議の開催を了承したからだった。

◆全土での停戦宣言へ 経済発展をめざすテインセイン政権の思惑
政府側がこれを了承したのも「全土停戦協定」の調印を実現したいという思惑からだ。政府は、これまで少数民族武装勢力の各組織と個別に停戦協定を結んでおり、いまだに停戦できていない組織は、KIOやその支援を受けて活動しているパラウン族武装組織のパラウン州解放戦線(PSLF)を残すのみとなっていた。

経済発展をめざすテインセイン政権にとって、「全土停戦協定」の実現は、国外からの投資や援助を呼び込む格好の材料となる。一部の組織は、すでに停戦協定は文書で締結されており、再度協定を結ぶ必要性を感じないと難色を示していた。
しかし、少数民族側は、政府との政治交渉を進めていくうえには、政府側の提案を受け入れる必要があると見ており、今回のライザ首脳会議では、「全土停戦協定」に署名するかどうかが最大の焦点となった。
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