北朝鮮各地で10月末から非公開の銃殺が相次いでいる模様だ。共通する罪状は「不純録画物」に関連したもので、韓国のドラマなどの映像を流布、売買、密輸入させたためとされる。複数の北朝鮮内部の取材協力者が電話で伝えてきた。(石丸次郎)
咸鏡北道に住む取材協力者は、11月初旬に電話で、北朝鮮第三の都市・清津市で「不純録画物」に関連した事件で三人が銃殺刑になったとして、次のように伝えてきた。
「10月29日前後に、清津市で三人が銃殺になったと、○○郡の保安署(警察署)監察課の幹部から直接聞いた。容疑は『不純録画物』に関連した件としかわからないが、(処刑されたのは)金策製鉄所の幹部が二人と現職の保安員(警官)だという。公開処刑ではなかったようだ」。
この取材協力者は、「不純録画物」に関連して銃殺刑という最も重い処罰まで科されているのは、10月後半に平壌から「方針」が降りてきたためだと指摘した。「方針」とは、唯一の指導者である金正恩氏による直接指令のことで、北朝鮮社会において最優先に順守が求められる命令だ。
恵山市でも銃殺刑執行の複数情報
他地域でも時と事由を同じくする銃殺刑の執行があった模様だ。韓国の脱北者団体の「自由北韓放送」は10月30日、北朝鮮内の消息筋の話として、
「10月27日に北部両江道の恵山市で、『不純録画物』に関連して二人が銃殺され、六人が教化刑(懲役刑)になった」
と公表。多くの韓国メディアが引用して伝えた。
アジアプレスでは、この恵山市の銃殺刑執行について、別途に調査したところ、内部の協力者から次のような証言を得た。
「10月末恵山市で、幹部たちを集めて六人が裁判にかけられ、40歳代の男女二人が銃殺にされ、四人が教化刑に処された。罪名は『淫乱録画物』を不法に搬入して流布させたというものだった」。
処罰された人間の数などに違いはあるが、同時期同様の内容であるため、信ぴょう性は高いと思われる。恵山市は中国と国境を接し密貿易が盛んな都市だ。
北朝鮮では、8月以降「不純録画物」に対する大々的な取締りが行われている。
※アジアプレスでは中国キャリアの携帯電話で北朝鮮内の取材協力者と通話している。