◆無理な再開発の「副作用」の恐れ
突貫工事の不便なアパートであっても、住宅難に悩まされている一般庶民に部屋が供給されれば良いが、現実は不公平極まりないようだ。
「部屋をもらえるのはまず幹部。それから金正日の接見者などの『模範労働者』、革命遺家族、朝鮮戦争参加者の子孫などだ。だから大多数の平壌市民は、夢にも自分に住宅がもらえるなんて思わないから、『強盛国家』にもアパート建設にも関心なんてない」。
ク・グァンホ記者はそう言う。付言すると、建て直しの場合は、元のアパートの住民には無償で部屋が与えられるという。
今回の10万戸アパート建設などの平壌再開発プロジェクトは、故金正日総書記が出した《方針》であるため、国家的最優先課題となって進められている。したがって、建設資材や、ブルドーザー、クレーン、ダンプ、コンクリートミキサーなどの機材の調達と投入も最優先に行われ、乏しい外貨も集中的に投下されることになる。
すると、本来急を要する地方の道路や橋、学校など公共施設の補修改修や住宅建設などは、すっかり後回しにされるという事態が発生せざるを得ない。さらに現在、首都建設を理由に、地方都市や農村では食糧を徴発されたり、現金の寄付を求められたりということが、北朝鮮内部から編集部に報告さ れている。
経済が疲弊しきった現在の北朝鮮で、この度のような大事業を進めるのは大変な無理があることは自明だ。事業規模が大きい分、今後激しい副作用が各地で発生することになるだろう。
※ 本記事は2012年3月「北朝鮮内部からの通信リムジンガン」6号に掲載した報告に加筆修正したものです。
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