(参考写真)年老いた農民の女性が、収穫後の枯れたトウモロコシ畑で、取り残しを集めて回っている。2008年9月 黄海北道沙里院(サリウォン)市近郊の農村。沈義川(シム・ウィチョン)撮影

 

◇農作業報酬は規定の半分以下 「農業しない方がまし」と怨嗟の声も
(ペク・チャンリョン)
北朝鮮各地から最近になって、農民の窮状を知らせる声が続けざまに届いている。秋の収穫期を迎え、本来は農民の一年間の報酬として支給されるべき「分配」の食糧の量が、国家による軍糧米の先行徴収により半分以下にとどまった上に、さらに「軍隊支援」名目の追加供出を求められ、農民の不満の声が高まっているという。北朝鮮国内の複数の取材協力者が伝えてきた。

北部の両江道に住む取材協力者は11月12日、農場で「分配」状況の調査依頼に対し次のように伝えてきた。
「現在、収穫作業が終わったところだが、(国が)軍糧米を真っ先に徴収していくため、農民に『分配(年間の仕事量により農民一人ごとに配られる食糧)』される食糧が少ない。それにもかかわらず、農場の幹部達は農民たちに『(分配)調査員には既定どおり分配を受け取った』と答えるよう強要している。さらに軍隊支援ということで、トウモロコシ、保存のために凍らせたジャガイモまで、(国が)手当たり次第に供出させている」
と説明した。

徴収量は穀物の種類によって算定方法に差があり、例えば凍ったジャガイモの場合は、主要穀物と比べ4倍の量を納めなければ規定量に達しないという。
また、東北部の咸鏡北道の農場員の取材協力者は、13日のアジアプレスとの通話で、
「私の農場では、分配が配給6か月分だけトウモロコシで供給されました。供給されたのは皮付きのトウモロコシ145キロだったのですが、軍糧米が足らないということで、50キロを出せ(返せ)と言われました。足りない分配量は、後でくれるというのですが、信じる人は誰もいません」
と分配の現状を伝えた。軍糧米の徴収が国の最優先課題になっていることがよく分かる。

農場員の不満も高まっている。この取材協力者によると、ひどい仕打ちに激怒した農民たちの口からは「こんなことなら、仕事をしない方が(農業をせずに別の商売などで稼ぐこと)ましだ」という声が挙がるほどだという。不穏な動きを察知した当局は農民たちの離脱を防ぐため、「未配給の分については、毎月、『配給』として出勤状況に応じて渡す」と約束したが、人々の不満の声は収まっていない状況だとのことだ。
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