素朴さの残る街並を歩いて、ノスタルジックな気分に満たされるや否や、突如、ピカピカの巨大ビルが視界に飛び込み、その感傷は、一気に吹き飛ばされる。
旅行ガイドブックが喧伝する「悠久の歴史」が街中から滲み出てくるわけでもなく、テレビニュースが連日流す「経済発展」を象徴する高層ビルだけが乱立しているわけでもない。
古くて素朴なものと、新しくて挑戦的なものと、何でもかんでもが、まるで無秩序に混在しているのが、本当の今の北京である。
それは、建物のみならない。人々の生活や考え方も、社会の制度もそうである。新旧が混在する北京の街並は、過渡期にある中国の姿でもある。【宮崎紀秀】