市民ら公選法と政治資金規制法違反で
今後1年間にわたって給与を返上する考えを示すなど都議会の追及をかわすのに必死な東京都の猪瀬直樹知事だが、いよいよ捜査当局の追及を受けることになりそうだ。徳洲会病院グループから5000万円を受け取っていた問題で、公職選挙法違反と政治資金規正法違反の疑いで東京地検に告発された。(アイ・アジア編集部)
告発したのは、市民団体「政治資金オンブズマン」のメンバーや一般の市民ら31人。
8日に送付された告発状によると、猪瀬知事は2012年12月に行われた都知事選挙の一か月ほど前、徳田毅議員(当時、自民党)から選挙運動資金としての5000万円の寄付を受け取ったものの、その明細書を出納責任者に提出せず、選挙運動費用収支報告書に虚偽の記入をさせたという公職選挙法違反の疑いと、年間最高150万円の寄付しか受け取れないのに、これを上回る5000万円もの大金の寄付を受け取ったという政治資金規正法違反の疑いがもたれている。
猪瀬知事は、東京地検特捜部が徳田毅議員の選挙に絡んだ公職選挙法違反事件で徳洲会病院グループへの強制捜査を行った直後に5000万円を返却し、その事実が報じられると個人的な借り入れだったと弁明した。
そして今年11月26日の記者会見では、自らが書いたとする借用書を示して違法性が無いと主張した。
これについて告発した政治資金オンブズマンの共同代表で神戸学院大学教授の上脇博之さんは次の様にと話し、捜査の必要性を主張している。
「猪瀬知事は、事件発覚直後マスコミに『徳田氏から資金提供を受け、応援してもらうことになった』と述べ、5000万円が選挙運動のための資金だったことを認めていた。
ところが、その直後、それさえ否定し、個人的な借入金だと強弁し続けている。5000万円が個人的借入金なら条例に基づき資産報告していたはずである。それをしなかったのは、それが世間に公表できない闇献金だったからにほかならない。説明も二転三転させ、説明責任を真摯に果たそうとはせず、責任回避に終始している。極めて悪質である。こうなると告発せざるをえない。検察は、徹底的に捜査し、猪瀬知事を立件すべきである」
また告発人の代理人を務めている阪口徳雄弁護士は次の様に話している。
「1993年10月に宇都宮地裁で言い渡された判決が1つの参考になる。この判決では、借用書が無いにも関わらず受け取った3000万円について借入だったと主張していた自治体のトップに対して、『これだけの大金について借用書もなく、利息、返済期限、返済手段などについて一切話がなかったのは、借入だとする主張と大きく矛盾する』とした。そして賄賂と認定して有罪判決を言い渡している。猪瀬知事が示した借用書には返済期限も書かれておらず、どう考えても本物の借用書とは思えない。徳洲会病院グループからの闇献金だと見るのが自然で、捜査が進めば自ずと明らかになるだろう」
告発が受理されれば東京地検特捜部が捜査に乗り出すことになる。猪瀬知事の5000万円をめぐっては、贈収賄など罪に問われ有罪が確定した三井環元大阪高検公安部長も、別途刑事告発している。
これについて在京テレビ局の司法記者は、「三井さんの刑事告発は法律の構成要件に無理があり東京地検の幹部も、『これで捜査に着手するのは困難じゃないか』と話しているが、今回の告発は筋が明確で、捜査に着手しないわけにはいかないとの声も聞こえる」と話す。
給与の返上で都議会の追及をかわそうとしている猪瀬知事だが、東京地検特捜部の捜査をかわす術は無さそうだ。