R:そうすると、熔け落ちた燃料の塊を取り出す以前の問題ですね。
小出:そうです。熔け落ちた燃料そのものは、たぶんつかみ出すことは出来ないのです。でも、熔け落ちていない燃料は、どうしてもプールから移さなければいけない。それを今、なんとかやろうとしているのですが、それだけでも10年かかるか20年かかるか分からないという大変な作業なのです。
R:チェルノブイリでは原子炉自体をコンクリートで固めてしまう、「石棺」という方法が取られました。福島第一原発でも当初こうした方法を取るのではないかと言われていましたが、現状では、燃料を取り出すという方向で進んでいるようです。
小出:まず、使用済み燃料プールの底に沈んでいる燃料だけはなんとしても取り出さなければいけません。それをしない限り、石棺で覆うことも出来ません。石棺で覆ってしまうと、使用済み燃料プールの底に今、眠っている使用済み燃料を取り出すことすらできなくなってしまうからです。その次に、国や東京電力が言っているように、1、2、3号機の熔け落ちた燃料をなんとか掴み出せるかどうかという作業を考えることが出来るようになるわけですが、私は多分、それはできないと思います。その段階で諦めて、石棺というものを作るということになると思います。
R:廃炉作業の見通しは、東電の発表した工程表のようには甘くないということですね。
小出:廃炉作業とは別に、汚染水をどうするのかといった目先の作業を続けることに多くの作業員が日々追われているのが現状です。でも、やはり仕方がないのです。もう事故がここまできてしまっていますので、とにかくなんとかこれ以上汚染を酷くさせない、事故を進行させないということをやらなければいけません。
そうした中で、若い人たちも含めて、ほとんど被曝に対して知識もない人たちが、下請け・孫請け構造、1次、2次、3次、なんでも10次にも及ぶという、そういう下請け構造の中で、毎日、被曝を強制させられて働いている。私はそのことが心配なのです。
今日も福島第一原子力発電所の現場では多くの労働者が被曝をしながら作業を行っている。1、2、3号機の廃炉作業では、4号機よりも多くの被曝が伴うとみられている。作業員たちの健康を政府や東京電力は守ることができるのか。それをきちんと監視することが必要だ。
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