R:円安で石油が高くなり、電気料金もたびたび値上げされているせいで、なんとなく火力だけに頼っているとコストが高いんじゃないかと思わされてしまっていたのですね。
小出:そうです。もともと原子力なんかに手を染めなければ、私たちはもっとずっと安い電気代で済んだはずなのです。ところが、愚かな電力会社の経営陣のために、これまでも高い電気代を払わされてきたわけです。
R:それではどうすればいいのですか。
小出:原子力をやめてしまえば、今持っている発電所が不良債権になってしまうわけで、その部分の穴埋めをしないといけないという問題は、短期的にはあると思います。けれども、もともと高い原子力発電なんかやめた方がいいのであって、これから火力なり水力なりに転換していけば、基本的には安くなるはずです。
R:そうしたことをマスメディアはもっと声を大にして伝えるべきなのですが、実際にはマスメディアによる原発批判は小さくなってしまっていますね。
小出:日本の政府、電力会社、原子力産業、マスコミなどなど、全部がグルになって、とにかく原子力がいいんだという宣伝をこれまで流してきたのです。そして福島第一原子力発電所の事故が起きているにもかかわらず、原子力をやるという方針をますます強めようとしています。その時に、またマスコミもそれに巻き込まれてしまっている。原子力ムラという組織が、全く無傷のまま今でも生き延びてしまっていると私には見えます。
R:とにかく、日本の電力は火力と水力で十分に間に合うということですね。
小出:そうです。政府の統計データがそれを証明しています。
R:なおかつ、火力と水力発電の方が十分にコストが安い。
小出:そうです。それも電力会社の経営データが示しています。
R:これから原子力発電所を止めたり廃炉にしていくにあたって、大変なお金がかかりますし、今後も作り続け、動かし続けて、また福島の事故のようなことが起こった場合のことを考えれば、経済コストの面から言っても、火力・水力で十分だということですね。
小出:福島の事故について、きちっとした賠償・補償をしようと思えば、日本の国家が倒産してしまうほどの被害がすでに出ているわけですし、これから廃炉ということをやろうとすれば、大変なお金がかかるというのは本当のことなのです。それはもう逃げることができませんので、私たちがそれと向き合うしかないのです。これ以上、原子力をやってしまうのならば、その大変さがどんどん膨らんでしまうわけです。まずは原子力から足を洗うというのがいいと思います。
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