◇地震は地下核実験と直結しない
R:北朝鮮は、咸鏡北道吉州郡豊渓里というところで地下に穴を掘って爆発させたとしています。それは映像などで 直接見られたわけではないのですが、何らかの大きな地震と言いますか、地下で大きな爆発があったというのは、国際機関などの調べで明らかになっています。 これは、核爆弾の実験としてはどう理解したらいいのでしょうか。やはり未熟なもの、小型のものと理解していいのでしょうか。
小出:話にならないほどの小型なものです。ただ、小型の原爆を作るというのはそれなりに難しいことなので、朝鮮民主主義人民共和国に言わせれば、「どうだ俺たちはこんな小型の原爆だって作れるのだぞ」という言い訳になるのかもしれません。
観測された地震そのものは、普通の火薬を使った爆弾でもできるほどのマグニチュードでした。皆さんはその時の地震が核爆弾を爆発させた証拠だとおっしゃるわけですけれども、私は直結しないと思います。
R:見えないところであたかも大きな武器をもったということを誇示するための一つのトリックのようなものの可能性もあるということですね。
小出:私はそう思っているのです。
R:北朝鮮はその後、ウラン濃縮のための道具を揃えたり、ウラン濃縮の実験場をアメリカの核研究者に直接見せたりしていますけども、これも進展はしていないということですか。
小出:進んでいるとは思いますけれども、ウラン濃縮という技術は大変難しい技術です。例えば日本だって、やろう やろうとしてきたわけで、人形峠でパイロットプラントを作って、その技術を基に青森県六ケ所村に巨大なウラン濃縮工場を作ろうとしてきたのですが、作れば 作るだけどんどん壊れていってしまい、うまくいかない。そして、2012年度から新型のウラン濃縮工場を作ろうとして、今やっているところなのであって、 簡単に出来るものではないのです。
R:日本の技術力をもってしてもうまくいかないのですね。
小出:米国と戦争状態にある国ですから、もちろんなんとかしたいという思いはあるでしょうし、それなりの努力もしているだろうとは思いますが、いずれにしても容易ではないし、あの国が核兵器を簡単に持てるという風には私は思っていないのです。
日本ですら、原子力の世界は、情報公開が不透明で秘密主義が貫かれている。ましてや多くのことが秘密に伏されている北朝鮮からは、出てくる情報量が絶対的 に少ない。だから、メディアは北朝鮮からの数少ない情報に惑わされ、時に利用されてしまう。北朝鮮が核の能力を見極めるためには、今後も情報を精査してい く必要があるだろう。