◇「三回忌」で追悼行事に強制動員 旅行証明書も発給停止で平壌入り禁止
（ペク・チャンリョン）
北朝鮮当局が故金正日総書記の没後二年を迎え、12月1日より追悼期間を宣布し住民の統制を強めている。北朝鮮内部での取材で分かった。
北朝鮮の北部・両江道に住む取材協力者は11月30日、アジアプレスとの通話で
「12月1日から追悼期間が始まります。明日（1日）から、いかなる理由に関わらず、欠勤するなという通告がありました。追悼期間中には（関連）行事に欠かさず参加し、誰一人として抜けてはならないと、幹部たちが話しています」
と現地の様子を伝えた。
今年は「三年祭（三回忌）」に当たるため、追悼行事が去年よりも多いと、取材協力者は語る。これを受け、住民たちの移動も制限されている。「二部」と呼ばれる旅行、移動に関する業務を取扱う保安署（警察）傘下の行政機関では、旅行の際に必要な「旅行証明書」の発給を厳しくし、特に「平壌行きの証明書の場合、一切の発給を許可していない」とのことだ。また、現在平壌に滞在中の住民も、追悼行事が始まる前にすべて元の居住地に戻るよう強制されているという。
また、この取材協力者は「12月1日からは、息を殺して過ごさなければならない。下手すると『鼻輪』になります」と声をひそめる。「鼻輪」というのは「耳にかければイヤリング、鼻にかければ鼻輪」を略したもので、「保安機関による法の恣意的な適用」を意味する北朝鮮独特の表現。大声で歌ったり酒を飲むだけで「喪に服していない」といちゃもんを付けられ、罰せられる可能性があることを指す。
北朝鮮では実際に、故金日成主席（1994年死去）や、昨年12月の故金正日総書記の一周忌の追悼期間中、喪に服さず生活する住民を罰してきた。飲酒や賭け事はもちろん、子どもの一歳の誕生日を祝う伝統行事も禁止され、笑っただけで罪に問われる場合もあったという。
さらに、北朝鮮当局がここ数か月のあいだ、猥褻ビデオや韓国ドラマなど「非社会主義的」な文化に接した住民に対し、銃殺などの厳罰をもって臨んでいることも、現地住民を萎縮させている。同じ両江道の恵山（ヘサン）市では、哀悼期間突入の二日前の11月29日に、猥褻ビデオを視聴した罪で住民二人が銃殺されたばかりだと、別の取材協力者が伝えている。
追悼期間は今後、約一か月間続くと見られる。生前、恐怖政治で鳴らした故金総書記の施政を、息子・金正恩氏が受け継ぎ、国民の自由への抑圧をさらに強めている。北朝鮮住民の心中にいかほどの哀悼の意が湧き起こるのか、推して知るべしと言えそうだ。
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