◇主要機関に側近多数 張氏への忠誠も高く、反発起こるとの見方
(本紙特約=「デイリーNK」キム・ヨンフン、オ・セヒョク記者)
北朝鮮で金正恩氏に次ぐ権勢を誇っていた張成沢(チャン・ソンテク)国防委副委員長が失脚し、彼の側近の多くが粛清されているとされる。こうした中、今後も粛清が続く場合、北朝鮮内部で不満を持った勢力が反発する可能性があるとの見方が出てきている。内部事情に詳しい脱北者に話を聞いた。
故金正日総書記、金正恩第1書記の個人資産を蓄財・管理し、外貨稼ぎを活発に行なう代表的な機関でもある「北朝鮮労働党39号室」の幹部だったキム・ソンホ(仮名)氏は今月5日、デイリーNKとの通話でこう明かした。
「金正日時代、張成沢は金正日のけん制を受け軍部では余り力がなかったため、党の中心部をはじめ国家安全保衛部(情報機関)や人民保安部(警察庁)に親しい人物を布陣し始めた。今回、張成沢が失脚したことにより彼らは相当おびえており、振る舞いに慎重になっていると思われる。
張成沢は党での自身の力を利用し、いつでも発動可能な護衛武力である『機動隊』を組織したりもした。現在、彼らは息を潜めているが、粛清という極端な立場に追い詰められた時にどう反応するか予測できない。張成沢の側近といえる人物は主要機関に多数布陣しており、彼らを全員粛清するのは相当な時間がかかるうえ、限界がある。この過程で何か事件が発生する可能性もある」。
また、2010年まで黄海北道の人民委員会(行政機関)で高位幹部を歴任したチェ・ジニョン(女性・仮名)氏も
「北朝鮮にいるとき、張成沢と一年に一、二回会う程度の付き合いがあった。彼は周りの人間の世話を怠らず、人間的にもとてもいい人であったため、彼の失脚を強く惜しんだり、(失脚に)不満を抱く人物もいると思われる。北朝鮮は恐怖社会であるため、粛清により相当な数の張成沢人脈の人物が犠牲になると予想される。
しかし北朝鮮で張成沢はただの高位幹部とは異なる上(編注:金正恩氏の叔父)、それなりの勢力を持っている存在。すでに粛清された中央党行政部の2人(編注:李龍河(リ・ヨンハ)行政部第1部長と、張秀吉(チャン・スギル)行政部副部長)以外にも、張成沢人脈は党、軍部、国家安全保衛部に布陣しており、彼らを全て粛清するのは大きな無理がある。少なくとも二、三か月はかかるだろう。この間に何か問題が起こるかもしれない」
と今後、北朝鮮内部で起こりうる混乱を予測した。
次のページ:新たな「ナンバー2」崔龍海氏は自分優先で忠誠を尽くすスタイル...