◆50年前から変わらぬパレスチナの状況~現地から世界に向けた「声」を肉声に
Q:複数のテクスト(声)を織り合せることで強い訴求力が生じています。
岡:着想を得た瞬間、私の中で、ガザをテーマにした複数のテクストが1本の糸でつながりました。ひとつは、ガッサーン・カナファーニーの短編「ガザからの手紙」(1956年)。ガザの難民の青年が、アメリカに渡った親友に向けて書いた手紙のスタイルで書かれています。

岡:もう一つは2003年、ガザでイスラエル軍のブルドーザーに轢殺されたアメリカ人学生、レイチェル・コリーさんがアメリカの家族や友人たちに書き送った何通かのメール。そして5年前、虐殺が進行する最中にガザから全世界に発信されたアブデルワーヘド教授のメールです。それは50年来、人々はガザから外の世界に向けて声を発し続けていたのに事態は変わっていないことの反映でもあります。これらを一つの作品にして、それが肉声で語られることで、朗読劇という「文学」作品、「アート」になるのだと思います。そして、「文学」というアーティスティックな表象を通して、私たちが、ガザに、パレスチナに、パレスチナの人々に出会うことが、大切な意味をもつのではないかと思います。

◆虐殺を忘れることは次の虐殺を準備すること~朗読劇で伝えていくことの意味
Q:「私たちは、次のガザ〈空爆〉の前にいる」と常におっしゃってます。
岡:昨年11月にも短期間ですが空爆があり、おびただしい人命が奪われました。5年前の虐殺は、残念ながら最後ではなかったのです。韓国のある詩人の言葉「忘却が次の虐殺を準備する」に倣うなら、私たちは今、ガザを忘却することによって次の虐殺を準備しているのかもしれません。

岡:殺戮が起こったときだけ話題になっても、それが終わればやがて忘れ去られる。その繰り返しの中で、パレスチナ人はエンドレス・フィルムのように殺され続けています。それでもなお、人間が人間らしくあり続けること。この暴力のまっただ中に置かれながら、それでもなお人は、いかにして、人間らしくあり続けることができるのか。肉声を通して語られる、ガザの声、そしてガザへの思いに触れて欲しい。忘却に抗してガザを記憶し続けるために、攻撃に見舞われたガザと私たちを「想像力」という人間の力で架橋するために。
【中村一成】

◆朗読劇「ガザ 希望のメッセージ」、公演の詳細は以下の通り。
【日時】①12月13日(金)19:00、②12月14日(土)14:00、③19:00 【会場】Space & Cafeポレポレ坐 東京都中野区中野4-4-1 ポレポレ坐ビル1F【料金】事前予約 1000円 (高校生以下 800円)/ 当日 1500円
【予約・問い合わせ】080-5314-1539(つくい)/ gaza2013tokyo@gmail.com

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