◇嘘だらけのCMを流し続けた電力会社とメディア
R:原子力は5重の壁に守られていて安全ですというCMがありましたが、そのCMを見て小出さんはどう思われましたか。
小出:実に不愉快ですし、そんなことがあるはずがないと私は警告してきました。実際に福島の事故が起きてしまっているわけですから、電力会社が言っていた宣伝が間違えていたわけですし、その間違えた宣伝を流し続けてきたマスコミにも私は責任があると思います。
R:CO2を出しません、というのも嘘ですよね。
小出:あれも嘘です。
R:廃炉とか10万年後の保管のことを考えると、普通の火力発電よりも出すと思うのですが。
小出:おっしゃる通りです。私は、現在言われている地球温暖化問題の原因がCO2だとは実は思っていないのです。でも、仮にCO2が原因だとするならば、原子力が最悪の選択になってしまいます。
R:石炭や石油よりも悪いのですか。
小出:遥かに悪いです。原子力を使いますと、核分裂生成物を大量に生みだしてしまって、その物質をきちんと管理しようと思うと、10万年とか100万年に亘って私たちが作業に取り組まなければいけなくなるのです。そのために一体どれだけのお金がかかるのか、どれだけの労力がかかるのか。そして、そのためにどれだけのCO2を出してしまうのか。そうしたことを考えれば、到底、引き合いません。
R:使用済み核燃料棒を冷やす時には、石油・石炭で冷やすのですか。
小出:国や電力会社は地面の底に埋めてしまおうとしています。自然に冷却されることを期待するものです。石油も石炭も使わずに、ただ埋めておけば、自然の力で冷やしてくれるだろうと期待をしているのです。けれども、そんな期待が成り立つことを証明してくれる科学がない。当然、地面の底に埋めてはいけない。まずは地表でお守りをするしかないし、それがどれだけの期間続くのかもわからないのです。きっと厖大なエネルギーが必要になるでしょう。
R:10万年の間に地震は起こりますよね。
小出:もちろん、起こります。何十年、或いは百年という単位で巨大な地震が次々襲ってくるわけで、十万年、百万年を考えれば、一体、何千回、何万回そういうことに遭遇しなければいけないのか、ということになってしまうわけです。
R:電力会社は、小出さんをはじめ、原子力に反対している人を出しただけでテレビ局に圧力をかける。テレビ界はその圧力が恐ろしいので、原発は5重の壁で安全だとかCO2を出さないといった嘘のCMを流す。電力会社とメディアのもたれあいが原発の安全神話を生み出してきたということですね。
ラジオフォーラムでは、08年に放送されたドキュメンタリー番組『なぜ警告を続けるのか?京大原子炉実験所―異端の研究者たち』について、当事者である毎日放送と関西電力に電話で問い合わせた。
毎日放送からは、「その件についてはお答えできない」との回答。
関西電力からは、「番組を受けてスポットCMを引き上げたという事実はない。毎日放送に対して学習会を行ったのは事実だが、それは以前から依頼をされていたことであり、この番組を受けて行ったものではない」と回答があった。
関西電力は番組への圧力を否定したが、電力会社が放送局に対して原子力に関する「学習会」なるレクチャーを行っているという事実を、果たしてどう受け止めるべきだろうか。
番組制作に関係した毎日放送の社員は、ラジオフォーラムの取材に対して匿名を条件に「関西電力からの圧力があって、関西電力を担当する記者たちを対象とした学習会を開くことになった」と述べている。
※小出さんの音声をラジオフォーラムでお聞きになれます。